ぷるんぷるるん

女の子に気持ち良くいじめられるM男向け官能小説公開中。

目次と説明

更新履歴

21/06/15 
 何もかも未定です。
 他に進めている作業として『二人まとめて飼ってあげる』『寝取られマゾの崩壊と幸運』の改稿作業。どっちも元の文章は残す予定です。
 後は別ジャンルにちょっと手を出していますが、難儀しています。

21/04/04 
寝取られマゾの崩壊と幸運

21/03/21 『寝取られマゾの崩壊と幸運』作業進捗
 今月中には販売を始める予定です。

21/03/10 自称天才錬金術師、憧れの先輩を堕とす
 酒に任せて書いたようにも見えるかもしれませんが、素面で書きました。台詞のみです。
 言い訳は下記にて
21/03/10 コメントお返事と雑記

 ポンと出せそうな書き溜めが尽きたので、しばらく更新が止まるかもしれません。


目次

■淫魔とか出てくる短編小説
変態大図書館あるいは自慰専用巨大風俗店(オナニーがメインです)

淫魔に全身を舐め回されて(キス 乳首舐め フェラチオ)
前編 / 後編
淫魔でナースな幼馴染(媚薬、ナース、アナル責め)
前編 / 中編 / 後編
覗きのお仕置き、魔性の水泳部(覗き、アナル、去勢・半女体化、3人称)
前編 / 後編

■淫魔とか出て来ない短編小説
終わりの日、最果ての館にて(不条理系。全編通して台詞のみ)
前編 / 後編
春に縁あり(主人公、ヒロイン双方が責められるほか、分岐による寝取られ、赤ちゃんプレイなど)
前編 / 後編
邂逅、それから(スパンキング、前立腺責め)
前編 / 中編 / 後編
恋人は巨根のふたなり(ふたなり、男が犯される側)
前編 / 中編 / 後編1 / 後編2

■催眠術とか掛けられる短編小説
後輩マネージャーの催眠術(年下の女の子、包茎化、寸止め)
前編 / 中編 / 後編
お姉さんに催眠術を掛けられて雌化(逆アナル 前立腺 メス化)
前編 / 中編 / 後編

■モンスター娘を題材にした小説
布団に化けたミミック娘に絞り取られる話
前編 / 後編
淫靡な試練(スライム娘に寄生される淫魔ハンター)
10(完結)
触手娘に突然襲われる(逆アナル 男が触手に口を犯される)
前編 / 後編
スライム娘にアナルを犯される(逆アナル 前立腺 手・オナホコキ)
前編 / 後編
スライム娘飼育記録(M要素薄め、1人称)
10前10後1112前12後最終前最終後

■長編小説
奴隷は二人、包茎と美少女(S女、M女、M男の3Pもの(?))
101112131415
161718192021

包茎再教育『マゾの刻印』(包茎男子が女子だけのクラスに編入させられ、虐められる小説)
101112131415
16171819202122/※22以降分岐しています。
 ▼松丸知奈ルート
 101112131415
 161718192021222324252627
 282930313233343536373839
 4041424344
 ▼戸倉真里ルート
 
 ▼高津芽衣ルート
 
 ▼宮久保若菜ルート
 
 ▼荒谷悠ルート
 
 ▼貝塚文子ルート
 1011
 ▼メス化ルート
 B1B2
 ★おまけ
 EX1EX2EX3
 EX5 A
 EX5 B
 炬燵、包茎、美少女
 包茎ゆえの恋路
 透き通る程に澄んだ柔肌と声音
 ミニスカサンタの 前編後編
 後輩の誘惑 前編後編

SM的スポーツジム(スポーツウェアの女の子に責められる話です)
10111213(エロ無し注意)/完結

SM的スポーツジム『オナニーショー編』
前編 / 後編
(同一カテゴリとしましたが、上記の長編とは直接の繋がりが無い短編です)

闇とシコシコr(同名の旧作を改稿したものです)
10111213141516/完
闇とシコシコ#読みきりパンツコキ(顔面騎乗 パンツコキ)

■一記事読みきり短編小説
自称天才錬金術師、憧れの先輩を堕とす(台詞のみ。機械姦(?))
チクニーを手伝ってくれる幼馴染(口の悪い女の子にチクニーを手伝ってもらう系)
大学生の負けたがり彼氏(女性一人称。同棲カップル。匂い責め。ローションプレイ)
つがい奴隷(学園物。MMカップル)
君の精通(台詞のみ。おねショタ。マゾの英才教育)
彼氏持ちの痴女ちゃんに告白して振られた挙句、玩具にされる童貞くん(台詞のみ。淫語。当然のように本番なし)
後輩ちゃんからのおねだりと命令(オナ(セルフSM)指示、痴女衣装、誘惑。台詞のみ)
全裸ウェイターの若者(CFNM 寝取られ M男の目線ではなく第三者目線)
スライム娘にプールで犯される(スライム 前立腺 微ホラー?)
自分より背の高い年下の子(背の高い女の子 逆ナン 膝で股間をぐりぐり)
制服に化けたミミック娘に犯される(物体に擬態した美女 本番描写あり)
美少女に憑依され、メスへと堕ちる教師(憑依されて、乳首やアヌスを勝手に開発されてしまうような話です)

 長くなって来たので分割しています。
 上記以外は『目次その2』にて。

★DL販売始めました
販売小説一覧(試し読みできます)
その1その2その3その4その5その6その7その8
ジャンル別
 学園物、学生ヒロイン
 淫魔、モンスター娘
 ファンタジー
 ふたなり
 その他

★ブラウザ視聴に関して

販売先サイト
同人誌、同人ゲーム、同人ソフトのダウンロードショップ - DLsite.com

★販売中の作品の番外編など
嗜虐の魔法少女シリーズ番外編
射精解禁日  前編後編


★その他、雑記や、変わったテーマの小説や、それ以外の文章など

2015/06(休止です)
2015/05(プライベートとか、どうでも良いことばかり)
2015/04(振り返って、色々と)
2015/03(反省とお知らせ)
2015/02(管理人の雑記など)
一年が経過しました(管理人の雑記)

淫語・言葉責めコレクション(女の子の台詞だけで構成された話)




当ブログへのリンクはご自由にどうぞ。
下記のバナーを右クリックで保存してお使いください。

120×60サイズ

200×40サイズ


ランキングに参加しています。









当ブログに掲載している小説の一部は「小説家になろう」「Pixiv」「novelist.jp」「暁」にも掲載しています。





PageTop

目次 その2

目次 その2です。

■淫魔に搾り取られる小説
包茎にされたい
前編 / 後編
淫魔の呪い(逆アナル多め 複数人から性的にいじめられる)
前編 / 後編
ギャル風淫魔にいじめられる包茎(包茎 童貞 ギャル レズ)
前編 / 中編 / 後編
水泳部のお仕置き(『覗きのお仕置き、魔性の水泳部』の前身です)
前編 / 中編 / 後編
怒りのペロペロ(唾液、媚薬、男がお仕置きされる系 3人称)
前編 / 後編
包茎男子と淫魔(包茎、良い匂いの女の子、エロ成分少なめ)
前編 / 後編
淫魔様の家畜(調教済みM男、包茎、射精管理)
前編 / 中編 / 後編

■一記事読みきり短編小説
脈絡もなく淫魔に襲われる話(逆アナル 前立腺 半女体化)
露出狂に遭遇した淫魔(おっさん 女体化 淫魔)

■ふたなり×M男をテーマにした小説
ふたなりM性感(フェラ アナルセックス 敬語)
前編 / 後編
ふたなりの後輩に犯される男(兜合わせ フェラ アナルセックス)
前編 / 中編 / 後編

■美少女ヒーローをテーマにした小説
プリティハンター!(女の子3人、調教、実験作)
前編 / 後編

■ジャンル未定
お菓子にされる生殖器(怒りのペロペロのリメイク 淫魔設定なし 乳首、玉舐め、フェラ 男根、精液をお菓子扱いなど)
前編 / 後編

闇とシコシコ(純愛コメディ、女の子に自慰を見せたり、一緒にしたり系)
※改稿版があるので、基本的にはそちらをどうぞ。
10【エロ無し注意】111213最終話

■体験談風M男小説
足コキいじめ、他(短編集)
全裸で散歩させられた

目次と説明(TOP記事)に戻る





PageTop

男子マゾ部(未定)の導入(未定)

(続きや有料無料、何もかも未定です。一種の雑記、雑文です)


 北国の短い春があっという間に過ぎ、この頃は学生服の上着を脱ぐことも増えてきた。今朝も日差しは強く、初夏を迎えたのだと強く実感する。
 六月か。
 進学から二ヶ月以上が経っていることに焦りを覚える。
 僕は今日こそ入部届を出すつもりだ。
 その部を知ってすぐに記入を済ませ、提出できずに持ち歩いている入部届。毎晩鞄から取り出しては眺めて、空想に耽ってきた。
 空想を現実にする。その為に僕はこれを提出しなければならない。
 いつもよりずっと早くに家を出た。
 なんとなく、これを提出する所を級友に見られるのは嫌だった。
 部活動が始まってしまえば、同じことだというのは分かっていても、感情が追い付かない。
 だから僕は誰よりも先に登校するつもりだったが、自転車置き場には既に数台が停められていた。
 嫌だなと思ったが、これ以上は先延ばしにすべきではない。
 自転車を停めて校舎へ向いつつ、職員用の駐車場を確認する。
 僕が入部を希望する部の顧問であり、僕の遠い親戚でもある戸羽公彦の愛車はきちんと停まっていた。
 趣味の悪い見た目をしている黒いスーパーカー。奇妙な意匠が余りに珍しい為、車種を聞き出してネットで調べて驚いた記憶がある。公立校の一教師が乗るには分不相応な車だ。
 つくづく不思議な人だと思う。公彦さんは年齢不詳と言っても過言ではない容姿をしている。僕と同い年の様にさえ見える時もあれば、校長などは比較にならない程に歳を重ねている様に見える瞬間もあるのだ。
 けど、それは些細な事柄だ。
 彼の不思議は、別のところにある。色々と聞き出そうとしても常に煙に巻かれる。口が立つ訳ではない。例えばそれは、にわかに僕の気が変わってしまったり、のん気に話をしている場合ではなくなるような出来事が急に起こったり、質問の答えをはぐらかされるというよりも、質問さえもできないのだ。
 最初は偶然だと考えたものだが、何年にも渡って似たような事が起こり続けているのだから、人為的なものを認めずにはいられなかった。
 公彦さんはきっと、不思議な力の持ち主なのだ。
 気味が悪いとは思わない。僕に対する害意はないという確信があるからだ。そうした心持を不思議に感じるが、それさえも彼の力が及ぶところだとすれば、僕にはどうすることもできない。
 しばし足を止めて公彦さんのことを考えていたが、不意に入部届のことを思い出し、僕は駆け足で玄関口へ向った。
 靴を履き替える頃には、僕にとっての公彦さんは、不思議な力を持った年齢不詳の遠い親戚ではなく、これからお世話になる部活動の顧問を務める教師でしかなくなっていた。
 早足で職員室へと向う。扉を前に、僕は襟を握り締め、何度か深呼吸をする。身体は薄っすらと汗ばんでいた。
 職員室まで早足だった為ばかりではない。
 この期に及んで僕は恐れていた。良いのだろうか。
 僕がこれからすることは、世間では酷く浅ましく情けないとされる行為だ。
 そうと分かった上で、その行為に恋焦がれている。
 整えた呼吸が再び乱れ始める。その時だ。
 扉が独りでに開いた。いや、公彦さんが中から開けたのだ。
「おう、俊助。どうした? こんな早くに」
「えっと……あの……」
「なんだよ、相談事でもあるのか? お前んとこの担任は西崎だったよな。まだ来てねーけど」
「そ、そうじゃなくて……」
 半ば無意識に、あるいは衝動的に、鞄から届出を取り出そうとするも、手が震えて上手くいかず、鞄を落としてしまう。
「俊助?」
 頭が真っ白になっていた。思いがけず現れた公彦さん、鞄を落としてしまうという失敗、僕は搾り出すようにして部活、とだけ口にした。
「あん?」
 そう訝しがる様な声をあげながら、公彦さんが屈む。鞄を拾おうとしてくれている様だった。
「ああ、これか?」
 幸か不幸か、僕は鞄を落とすよりも前にファスナーを開いていたらしい。更には入部届が鞄の口からはみ出していたのだ。
 公彦さんは透明なファイルに挟んである届出を手に取る。
「なんだ俊助、お前、マゾだったのか」
 息を飲む。マゾの男なんて、酷く見っとも無い存在の一つだ。心臓が早鐘を打つ。汗が止まらない。
「マゾ部、入るのか?」
 公彦さんが鞄を僕に差し出しながら問う。
 僕は彼の靴を見つめたままで首を縦に振る。俯いている為に頷く動作が分かりづらいのではないかと思い、何度か続けた。
「そうか。今年は新入部員なしかと思っていたけど良かったよ。知らない間柄じゃないしな。ま、俺は殆ど顔出さねーけど。マネージャーに任せてあるんだ。昼休みにでも部室へ行けよ。お前のことは伝えておくからよ」
 僕はもう何度目になるのか分からない首肯をして、鞄を受け取った。
 公彦さんが背を向けるのを気配で認め、ようやく顔を上げる。彼はファイルで顔を仰ぎながら「それにしても暑いよなあ」とぼやいた。
 背広の後姿も相変わらず不思議な印象だ。新米教師にも熟練教師にも見える。
 そんなことを思ったのも束の間、こちらに向き直る素振りがあり、僕は慌てて身体の向きを変えた。
「大変だと思うけど、頑張れよ」
 公彦さんの言葉。次いで扉を閉める音。僕は彼へと顔を向けぬまま「はい」と声をあげ、教室へ向けて歩き出した。
 背後から「さあ、おしっこ、しっこ。漏れちまう」という独り言が聞こえた。
 教室に着き、自分の席に掛けてからも、中々落ち着かなかった。
 遂に提出してしまった。
 予ねての目標を達成したというのに充足は感じられない。寧ろ、遂にやってしまったというある種の後悔が胸中に広がっていた。
 今からでも撤回すべきだという考えが頭に過ぎる。
 徐々に騒がしくなり始める教室の中、僕は独り、物思いに耽り続けた。
 そうしている内に午前中の授業が終わってしまう。
 部室へ。
 頭の中では未だに迷いが渦巻き続けていたが、身体は既に席を立ち、部室や選択科目の授業などで使われる教室が集まっている通称“B棟”へと向っていた。
 普段と何も変わらない昼休みの喧騒。
 それが今の僕には奇妙に感じられたが、すぐにそうではないと気付く。
 僕が奇妙、即ち異常な存在へと変わろうとしているのだ。
 正常と異常の境目に立ち、半身は既に日常の外へと放り出しているからこそ、日常を奇妙に感じてしまうに違いない。
 異常。
 その言葉が引っ掛かる。おかしい。
 そうか、おかしいのだ。被虐嗜好が部活動として成り立つなんてことは異常だ。この目で実際の活動を見た訳でもない。何故かその部活が存在していることと、入部をすれば僕の中にある歪んだ欲望が満たされることを知っている。
 何か変だ。
 そう思うと共に、僕の脳裏に公彦さんの顔が過ぎる。
 予ねて不思議な力の持ち主であると睨んでいる上に、彼はこの奇妙な部活動の顧問を務めている。関連付けて考えるのは間違っていない。
 それにしても、どうして今の今までそんな部活が存在していることを当たり前の様に受け入れていたのか。疑問を抱くことさえなかった。
 簡単なことだ。公彦さんが僕の常識や思考を捻じ曲げているに違いない。
 得体の知れない力で操られているのではないかと疑う。それでも恐怖はなかった。ただ真実を知りたいという強い気持ちが僕の中に生じている。
 僕はB棟と校舎を繋ぐ廊下の真ん中で足を止める。
 公彦さんに聞きに行こう。そう考えたのだ。きっとこれがいけなかった。
 背に衝撃を受ける。
「わあっ」という悲鳴。
「ご、ごめん」
 見ると同じ組の石野さんだった。
 思春期の男子が話題にあげがちな『同じ組の女子で誰が一番可愛いか』の議論では大抵の場合に於いて名が挙げられる美少女だ。
 もちろん僕も石野さんのことは可愛いと思っている。顔も然ることながら、文系らしく白い肌にほんの少しぽっちゃりとした体付き。背丈の低さも魅力的だ。
「山上くん。もしかして部室に行くところだった?」
「え?」
「聞いてるよ。マゾ部、入ったんでしょ?」
 僕は息を飲む。
 わざわざ入部するからにはマゾでないはずがない。そう判断するのが普通だろう。要するに彼女は僕がマゾだと間接的に知ったのだ。
 顔が火照っていく。
「一緒に行こうよ」
 石野さんはまるで何の変哲もない部活動に参加するかの様な調子だ。
 ほんの少し前までの僕がそうであった様に、彼女もマゾ部の存在を当たり前のものとして受け入れているらしい。
「待って石野さん。マゾ部なんて部活があるのって、おかしくないかな?」
 石野さんとは特別親しい仲ではない。それから僕は異性と接するのに慣れていない。
 この状況が如何に異常であるかをもっと強く主張すべきだと考えながらも、言葉は上手く出てこなかった。
 それでも石野さんはまるっきり取り合わないというのではなく、頬に手を置いて考える素振りを見せた。
 僕は安堵していた。異常であるという意識を共有できる相手が見つかるかもしれないという事に対してではない。女子から奇異の目で見られなかった事に対してだった。
 くすくすと笑い出す。
「そうかも知れないね。マゾの男子なんて情けなくて恥ずかしくてキモいって女子はみんな、そう思ってるもん。それは男子も分かってるよね? それなのにわざわざマゾ部に入るだなんて、自分がマゾだって学園中に知れ渡る様なことをするのは変だもん。普通はそんな部活があっても入らないよね」
「え……?」
「入る男子がいなければ廃部になっちゃうけど、こうして続いてるってことは、山上くんみたいなドMが多少はいるってこと。ふふっ、確かにそんなのっておかしいかも」
 上手く呼吸ができない。
 僕がおかしいのだろうか。
「どうしたの?」
 石野さんが何も言えずに立ち尽くしている僕の顔を覗き込む。
 彼女の表情を盗み見て、小さく呻き声を漏らす。
 愉悦。
 同じ笑顔であっても級友との談笑などの際には浮かばないであろう、妖しげな笑み。
「ふふ、遠回しにキモいって言われて興奮しちゃった?」
 少しばかり芝居がかった調子であるが、それに故に却って自然な態度に感じられる。
 マゾ部と公彦さんを中心として学園全体がおかしなことになっているのではないかという僕の推測は間違っていたのか。
「上手くやっていけそうだね。ほら、みんな待ってるから、早く部室に行こう」
 促されるがままに歩き始める。
 心に生じた痛みがズキズキと甘く疼いている。
 思考は麻痺したかの様に働かない。マゾ部なんてものが存在するという異常への関心は消えてしまっていた。
 先を歩く石野さんの白く柔らかそうな太ももに目を釘付けにされながら、B棟の最奥へ行く。
 男子マゾ部と書かれた紙が貼られた扉を開く。
 ふわりと漂う甘い芳香。ほら、と促されて中を覗き、僕は目を疑った。
 とても学園内の一教室とは思えぬ様相を呈していた。
 マゾ部というぐらいだから、SM器具や調度品としての拷問器具などがこちらへ迫り来るぐらいに飾られている、とまではいかずとも厳つくおどろおどろしい様子の室内を想像していたが、まるで違っていた。
 入ってすぐに擬似的な三和土がある。床を一段高くしているのだ。
 その高くなっているところが活動空間らしく、絨毯を敷いてある。淡い桃色の地に薄っすらと花柄の入った絨毯だ。
 カーテンから照明まで取り替えてある。どれも女の子っぽい意匠だ。
 黒板こそ残されているも、色とりどりのチョークを使った賑やかな落書きによって部屋の雰囲気を損ねてはいない。
 数人の女子がソファや天蓋付きのベッドに腰掛けてくつろいでいる。
「ひょっとして、その子が新入部員?」
 そうした声があがり、女子がいっせいにこちらへ顔を向けた。
 僕は顔を真っ赤にして俯き、ぎゅっと拳を握った。
「ほら、挨拶」
 隣に立つ石野さんに小声でそう言われ、僕は下を向いたままで口を開いた。
「し、新入部員の山上俊助です。よろしくお願いします」
 まばらな拍手。次いでこちらへ近付いてくる人影。
 僕は一層硬く拳を握る。
「よろしくね、俊助くん。私は主務の平坂琴音。見ての通り、部員は君一人。あとはみんな女子マネージャー。しっかりサポートするから頑張ってね」
 恐々と顔を上げ、平坂さんの顔を見やる。
 息が止まる。
 凄く綺麗な顔だ。髪を染めているでもなく、派手な化粧をしているでもない。所謂清純な容貌をしている。が、淫奔な印象を受ける。
 僕の目が曇っているのだと言われれば否定のしようがないものの、印象は確たるもので、対面しているだけで股間が熱を帯びてくる。
「えーっと、取り合えず、パシリからやってみよっか。ちょうどお昼だしね。真由も手伝って」
 真由というのは石野さんの名前だ。
 手伝う。パシリ。一体何が始まるのか。
 不安に苛まれながら改めて部室内を見渡す。仲の良い女子の一団が不当に占拠して、自分達がくつろぐ為だけに改造した様な部屋だ。
 平坂さんと石野さんを入れて七人。先の二人は小声で何かを話し合っている。残る五人は思い思いにくつろいでいるらしい。ゲーム機で遊んでいる二人組み。深々とソファに掛けて雑誌を開いている子。ベッドに腰掛けて携帯端末を覗き込んでいる子。それから教室の真ん中に設置されているテーブルで爪の手入れをしている子。
 受ける印象はそれぞれ違っているが、ざっと見渡しただけでも一様に容姿が優れていることは理解できた。
 この七人が女子マネージャー。
 不意に石野さんの声が耳に入ってくる。
「こうしましょう。いきなり露出は大変でしょうから、“ズボンのチャック”(前開き)から、下着越しに勃起したおちんちんだけ出してもらいましょう」
「それが良いかもね。ねえ、今の話、聞いてた?」
 平坂さんがこちらを向く。僕は目を丸くしたまま頷いた。
「できる?」
 石野さんの問い。これにはすぐに答えることができなかった。
「まあ嫌だって言ってもやってもらうけどね。マゾ部に入っちゃったんだから、それぐらいは当然だよね」
 そう言いながら、平坂さんが僕の前で床に膝をつく。彼女の手が股間へと伸びる。
 僕は反射的に股間を手で隠そうとするが、動かした途端に手首を捕まれる。石野さんだった。
「最初は緊張するよね。大丈夫。こうして手を繋いでてあげるから」
 途端に身体から力が抜ける。石野さんの小さく柔らかな手。絡めた指の細さ。
 繋いだ手の感触と優しい声音に僕はすっかり丸め込まれてしまう。
 僕に恥ずかしい格好をさせる為に、彼女は優しい振りをしているのだと分かっていながらも、恋慕に近い感情が湧いてしまう。
 平坂さんがファスナーに手を掛ける。反射的に目を瞑る。ぎゅっと強く手を握られる。安心感。
 微かに残る理性が自分は何をやっているのかと訝るも、陰茎を前開きから外へ出す為に握られると、その気持ち良さで思考はとろりと溶けてしまう。
 この日の僕は青を基調としたチェック柄のトランクスを履いていた。
 勃起した陰茎によって生じた膨らみの天辺には染みができていた。
 羞恥心に苛まれる。
「下着越しとは言え、彼女でもない女の子に勃起おちんちん見られちゃったね」
 繋いだ手を離す中で石野さんがそう口にする。
 彼女がどんな表情を浮かべているのか。気に掛かるものの、顔を見る勇気はなかった。
「恥ずかしい?」
 平坂さんに問われて頷く。
「そう。でもマゾ部に入るだけあって、おちんちんが小さくなる気配はないね」
 僕は酷く恥ずかしいと思うと共に、激しく興奮していた。まるで夢の中にいる様だとさえ思う。現実の僕はただベッドの中でおちんちんを硬くさせているだけだとしてもおかしくはない。
 寧ろ夢である方が納得できる。
 殆ど話したことのない同級生の女子や初対面の女子達を前にして、こんなに恥ずかしい格好をしている。そして、それを受け入れられてしまっている。
「パンツのもっこりを露出するのはただの準備。本番はパシリだからね」
 平坂さんの言葉に曖昧に頷く。
 彼女は続けて、残るマネージャーについて簡単な紹介を口にした。
 ゲームをしていた二人。一年生の海藤菜々美、二年生の菖蒲栞。雑誌を読んでいるのが三年生の堂島風花。携帯端末を弄っているのは二年生の雪花由乃。爪の手入れをしているのが、一年生の菖蒲烈。苗字が同じ二人は姉妹。
 紹介に続いて、平坂さんが一つの決まり事を告げる。
「マゾ部では、女子マネージャーの呼び方が決まってるの。名前に様付け。いいね?」
「は、はい」
 次々と与えられる情報に思考は全く追い付かない。ただ、とんでもない事が始まったという感覚があるばかりだ。
「じゃあ、ちゃんとできるか試してみようか。まずは私から。さあ、名前を呼んでみて?」
 混乱する思考の渦から記憶の断片をなんとか引き上げる。
「……琴音さま」
 女の子の名前を様付けして呼ぶ。ただそれだけの行為に僕のおちんちんは狂喜した様に疼いた。
「駄目。もっと大きな声でちゃんと顔を見ないと」
「琴音さま」
 おちんちんの疼きはますます激しくなる。
「そうそう。そんな風に呼びながら、何を買ってくるのかみんなに聞いてきて。その後はもちろん、実際にその格好のままで購買に行ってもうらうからね。あ、私は緑茶でおねがい」
「次は私。ほら、ちゃんと聞いてみて?」
 こちらを向いた石野さんの瞳には期待が満ちているように感じられた。
 僕の感情は屈辱、羞恥、法悦がぐちゃぐちゃに散らかったままだ。だが、異性に何かを期待されている以上、応えなくてはならないという気持ちが湧いている。
 石野さんと言い掛けて、慌てて口を噤む。
 決まり事となっているのなら、反故にした場合に罰則があるのかも知れない。今後は本人を前にしている時でなくとも決まりに則った呼び方を心掛けた方が良いのだろう。
「真由さまは……ど、どうしますか」
 様付けに口調が引っ張られる。情けないと思うものの、呼称に合わない砕けた口調を使う方が不自然だろう。
「私はミルクティーをお願い。後は、もう一回、私のことを呼んでみて」
「……真由さま」
 真由さまが満足げに笑みを漏らす。
 そんな態度を可愛いと思ってしまう。
「ほら、ぼさっとしてないで、みんなにも聞いてこないと」
 琴音さまの言葉にハッとして、靴を脱いで部室に上がる。
 位置の近い順に声を掛けることにして、ソファに掛けている風花さまへと近付く。
 彼女はこちらを向きもせず、雑誌の頁を捲りながら「パン」とだけ言った。
 低い声。赤みの掛かった茶色に染めた長い髪。取っ付き難い相手だ。
 パンとだけ言われても困ってしまう。もしも彼女の好みに合わない物を持って来たら機嫌を損ねるに違いない。
 こちらから問い掛けるのも躊躇われるが、後を思えば聞いておく他にない。
「ど、どんなパンにしますか」
 その問いを受けて、風花さまはようやく僕の顔を一瞥した。
「自分で考えなよ」
「は、はい」
 にべもない答えに僕は慌てて返事をするのがやっとだった。
 ふと見ると、真由さまと琴音さまも部室に上がり、談笑している。黒板近くの本棚の前で琴音さまがファイルを広げて、真由さまと共に書類を覗き込みながら言葉を交わし、時折笑い合っている。
 二人の様子を気にしていると、琴音さまから手振りで早くするよう促され、僕は次のマネージャーへと声を掛けた。
 ゲームで遊ぶ二人組みだ。
「菜々美さまと栞さまはどうしますか」
「ちょっと待って!」
「今良いとこだから」
 菜々美さまが声を上げ、次いで栞さまが後を繋いだ。
 ややして二人が揃って落胆の声をあげた。
「私はタマゴサンドと牛乳」
 これは菜々美さま。
「しぃは葡萄ジュースで良いよ。お弁当は持ってきてるから」
 しぃと言うのが栞さまの一人称らしい。
 菜々美さまは童顔で小柄だ。受ける印象としては幼げ。ツインテールがその印象を一層強くしている。牛乳が似合う。
 対する栞さまは、長く伸ばした艶やかな髪を眉の辺りで切り揃えており、落ち着いた印象を受ける。それでいて垢抜けた印象もある。顔の造り自体が派手であるが故だろうか。
 二人がゲームを再開するのを横目に見ながら、爪の手入れをしている烈さまに近付く。
「ねえ、恥ずかしくないの?」
 思いがけず烈さまの方から声を掛けられ、僕は言葉に詰まってしまう。
 烈さまは声音こそ栞さまに似ているが、纏う雰囲気は大きく異なっている。肩口までの髪はほんのりと茶色に染められており、顔立ちにはあどけなさが残る。事前に知らされていなければ姉妹であるとは気付かなかっただろう。
 雰囲気の差異も然ることながら、烈さまが長身であることも一因だ。座っている状態を見比べての判断であるから、印象よりも差がないのかも知れないが、妹である烈さまの方が高いことは間違いない。
「……変な格好させられて勃起して、挙句の果てに初対面の女子からパシリにされて、それで、恥ずかしくないの?」
「はっ、恥ずかしいです」
「へえ、それなのに勃起したまま?」
 僕が答えられずにいると、烈さまは「マゾってそういうものか」と呟いた。
「ところでさ、私ってどう見える?」
「え?」
「え、じゃなくて。どう見えるのかって聞いてるの」
「あ、えっと……せ、背が高いなと……」
「それから?」
「そ、それと……」
 僕はしばし口ごもるが上手い言葉が出てこない。
 その内に痺れを切らした烈さまが言う。
「単刀直入に聞くけどさ」
「はい」
「私みたいな子が彼女だったら嫌かな?」
「いいえ!」
 思いも寄らぬ質問に驚き、声が裏返った。加えて意図せず妙に大きな声が出てしまった。
 僕は顔を赤らめ、周囲の反応をうかがう。からかわれるのではないかと不安だった。
 みんなそれぞれに好きなことを続けている。
 ほっとする。
「嫌じゃないんだ。いや……あんまり女らしくないからさ、私。しぃと比べると特に。だからこうして、風花先輩に教えてもらって少しでも女っぽく……な?」
 と、言って光り輝く程に磨き上げられた爪をこちらに向ける。
「いきなりこんな話されても困るか。あ、買物はオレンジジュースを頼むわ」
「は、はい」
 僕は反対に「僕の様な男は恋愛対象に入っているのか」と質問したい様な気がしたものの、声に出す蛮勇は持ち合わせていなかった。
 真由さまが廊下で口にした様に、女子はマゾの男子を情けなくて気持ち悪いと思っているはずだ。
 先の様な問いをしたところで僕が落ち込んで終わり、それ以上は何も起こらなかっただろう。
 僕はしばし、風花さまの隣へ掛けて談笑を始めた烈さまの姿を横目に捉えながら物思いに耽る。姉妹間の軋轢、とまではいかずとも烈さまには思うところがある様子だ。
 マゾの僕に偉そうなことを言う権利などないが、烈さまだって充分に――。
「ねえ」
 少し舌足らずの甘く可愛らしい声音に呼び掛けられる。
 ハッとして声の主へと顔を向ける。
 ベッドに腰掛けている由乃さまだ。
「由乃はプリンとチョコレートね」
「は、はい」
「……なに?」
「いえ……特には……」
「じゃあなんで由乃のこと、じっと見てるの?」
 言うべきか言わざるべきか。
 答えに窮して黙っていると、由乃さまの表情が少しずつ険しくなっていくのが分かった。
 意を決して口を開く。
「ア、アニメに出てくる女の子みたいな声で、か……可愛い……と思いました」
「よく言われるんだけどさ、由乃、アニメに興味ないから分かんない」
 子どもっぽい口調が様になるだけの容姿も相俟って、寧ろアニメ声の女の子と言うよりはアニメに出ていてもおかしくない女の子といった風だ。
 もちろん口にはしない。
 ちらりと見えた携帯端末の画面に映っていたのは囲碁だろうか。
 興味を覚えそれとなく近付こうとすると由乃さまがこちらを向いた。目が合う。僕は慌てて顔を背けた。
 偏見と言われればそれまでだろうが、由乃さまの様な女子程、実は気が強いのではないかと思うのだ。
 さて置き、購入すべき物に関しては聞き出し終わった。
 後は実際に購買へ赴く段なのだが、ここである疑問が生じた。
 お金は誰が出すのか。
 まさか僕が出すことになるのか。
 可愛い女の子から使いっ走りとして扱われている状況に興奮しているのは間違いないが、金銭が絡むと途端に熱が引いていく。
 困った。
「はい、これ。仮だけど部員証」
 困っていたところへ、琴音さまから手渡される。
「購買のレジで提示すれば後払いにしてもらえるから安心して。詳しい仕組みに関しては後で説明するから、昼休みが終わる前に早く買物に行ってきて」
 購買で買物をするのに部員証だけで済むとはにわかには信じ難い。が、悠長にしている暇はない。
 奇妙な使命感に駆られて部室を飛び出すも、急に不安を感じて足を止める。本当にこんな格好で大勢の前に出ることが許されるのだろうか。いや、良いのだろうか。
 僕がマゾであることは否定のしようがない事実であり、女子におちんちんが勃起しているところを見られてしまう事を想像するとムラムラとする。一方で購買に集まっているのは女子だけではない。男子も買物に来ている。中には同じ組の男子がいる可能性だって少なくない。
 同性から馬鹿にされると言うのは、興奮しない。単純に不愉快だ。
 改めてマゾ部に所属するというのが何を意味しているのかを考えてしまうと、足が竦んでしまう。
 今ならまだ引き返す事ができるのではないか。
 そんな考えが頭を過ぎる。
 一つ大きく息を吸って考える。マゾ部に所属することで生じる利害はどちらがより大きいか。
 僕の足は自然と進み始めた。





PageTop

寝取られマゾの崩壊と幸運

ブログでの報告が遅くなりましたが、4月2日から販売しています。
寝取られマゾの崩壊と幸運

↑の画像から販売ページへ移動できます。

あらすじなどはこれまで報告してきたとおりですので、割愛させていただきます。
遅れに遅れて申し訳ないです。





PageTop

『寝取られマゾの崩壊と幸運』作業進捗

 一応推敲作業が終わりました。
 まだもう少し手直しは行いますが、ここから大幅に内容を変えることはないので各章の内訳を書いておきます。
 自分でも全体を俯瞰したいので。
 内訳の後に、プロローグ部分も載せておきます。
 どういう話なのかだいたい分かると思います。
 
 1.序
  所謂プロローグ
  
 2.寝取られ
  大学時代の話。同棲している恋人とのセックスに続けて失敗する内にマゾへと変わっていく主人公。両者の間に生まれる不和。
  浮気する恋人と、その事実に劣情を催す主人公。
  やがて自ら寝取られることを求めるようになるも、破局。
  
 3.崩壊と再生
  失意のままに転落していく主人公。
  再会した旧友の励ましを受けて立ち直り、転居先近くの公園で女性と知り合い、交際へ至る。
  新しい恋人に隠していた被虐嗜好がバレたことを契機に寝取られへの妄執を再び抱いてしまう。
  
 4.調教
  寝取られ願望を断ち切るための調教。
  仕事を辞め、六十日間の調教生活を始める。
  
 5.変化
  調教の日々とその結末。
  
 6.終
  エピローグ
  
  
  
 大体こんな感じの話です。
  
  1.序

 最も古い、性に纏わる記憶は疎外感と密に結び付いている。
 まだ性という字も知らぬ、性差が明らかになる前の頃であるが、私達は「エッチ」「スケベ」といった俗語を悪ふざけの冗談に用いる程度には理解していた。
 私達とは男女入り混じった四、五人の遊び仲間である。
 エッチごっこという遊び。それを言い出したのは私が密かに想いを寄せていた女の子だったと記憶している。
 それがどんな遊びだったのか、私には正確なところを語ることができない。
 はっきりと言えることは、押入れに隠れていかがわしいことをする、といった程度までだ。
 私はいつも見張り役を押し付けられていた。
 どうしてそうだったのか。理由は思い出せないし、そもそもなかったのかも知れない。私と違ってエッチごっこに参加にしていた男の子が特別優れていたようには思えない。
 私は襖に耳を押し当て、押入れの中で何が行われているのか知ろうとした。
 キスや脱衣。そして恥部を触り合う。
 物音や会話から察せられた行為は、愛撫と称しても過言ではない。
 押入れの中へ思いを馳せ、私は激しく悔しがると共に酷く興奮していた。
 精通するよりもずっと前の話だ。


 バーベキュー用のコンロに詰められた木炭がまだ赤く光っている。
 夕飯の残り香が漂う中、一人の老人がアウトドアチェアに掛けて船を漕いでいる。
 後姿を見ている。老人は長く伸ばした真っ白い髪を一つに結んでいる。
 彼は誰だろう。
 物を考え始めた途端、鈍くなっていた意識が鋭く研ぎ澄まされていく。自分の後姿など滅多に見る機会がないものの、すぐに理解した。あれは僕だ。
 僕はそのことに驚愕して、すぐにまた、別のことに気付いて驚いた。
 僕?
 自分を指して僕などというのは、もうずっと昔に二度としまいと誓ったはずだ。誓ったことさえ忘れてしまう程に昔のことだ。
 肉体を離れた私の精神はどうなってしまったのだ。
 僕は自分の姿を確かめようと手の平へ顔を向けた。確かにそうしたはずだ。しかし、視界は何も映さない。どうしたものかと顔を上げてすぐに気付く。僕の目は何も映していない。老いた自分の後姿も今は認められない。
 気付くと僕は、もう二度と見たくない、未だにそう思わざるを得ない顔を前にしていた。
 初めての交際した異性。
 日馬華蓮(くさま かれん)。
 僕はかぶりを振って自分に言い聞かせる。過ぎた日の事。過ぎた日の話。何度も繰り返すが、精神と肉体の間に生じた齟齬は広がっていくばかりだ。
 やがて僕は、僕が孫二人を連れてキャンプにやって来た老人であったことなど忘れてしまう。
 僕はもうすぐ大学三年生になろうかという青年として、そして華蓮の恋人、同棲の相手として、彼女に向き合うこととなる。
 
 
目次と説明へ戻る






PageTop