FC2ブログ

ぷるんぷるるん

女の子に気持ち良くいじめられるM男向け官能小説公開中。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

射精解禁日#後編

 結衣ちゃんはゆっくりとした口調で言う。

「上手に入れられたね」

 それから、俺の頭を優しく撫でつけた。
 まるで子供の遊びを見守るような態度だ。
 そんな扱いを受けて、俺は劣等感がじわじわと精神を蝕んでいくような心地を覚えた。
 これは性行為ではない。自分のやっていることは、児戯に等しく、稚拙で矮小な行為なのだと思わずにはいられない。
 だが、目と鼻の先には美しい少女の顔があり、触れる肌からは熱が伝い、彼女の纏う心地良い香が鼻腔をくすぐる。
 酷く惨めな姿だと嘲笑う自分が居る一方で、ペニスは擬似膣の中で大きく脈を打つ。

「入れて終わりじゃないでしょ?」

 俺の気などお構いなしに、結衣ちゃんは次の段階へと急かす。
 それに歯向かうなどと言う選択は、候補にすら挙がらない。
 オナホールに捻じ込んだペニスをゆっくりと引き抜く。
 ぬちゅっ……ぬぷぷ……。
 男根を快楽で満たす為だけに作られた玩具は、無数の柔らかな凹凸でその役目をしっかりと果たす。
 ペニスに走る甘い痺れに、俺は呻き声を上げた。

「ふふ……まだ一往復なのに余裕が無さそうだよ?」

「う、うう……それは、一週間ぶりの刺激だから……」

 泣き言を口走ると、結衣ちゃんは両手で俺の頬を捕まえた。

「ごっこ遊びで悶えちゃって。本番の言い訳はどれだけ長くなるのかな? きっと一息じゃ間に合わないね」

 今夜の結衣ちゃんはいつもより意地悪だ。
 これは彼女も溜まっているのだと見て良いのだろうか。
 なんてことを思考に過ぎらせながら、俺は腰を振り始めた。
 電流のような激しい快楽が肉棒を襲う。

「あっ、あう……う、くうう……」

 結衣ちゃんにじっと見つめられているにも関わらず、情けない呻き声を漏らしてしまう。
 彼女は微笑を浮かべたまま、黙って俺の痴態を愉しんでいる。
 ぬくちゅっ……ぬちゅ、ぬちゅ……。
 荒い呼吸に混じる、水気を多分に含んだ抽送音。
 女の子らしい部屋を満たす雰囲気だけは、セックスのそれそのものだ。

「くす……。恥ずかしい顔になってきてるよ」

 愉しげな声音が指摘する。それを否定することなど出来るはずがなかった。

「ねえ? 気持ち良い?」

「きっ、気持ち良いっ……!」

 搾り出したような掠れた声だった。
 結衣ちゃんに恥ずかしい姿を見られていることが、興奮を誘い込み、決してオナニーでは味わえない快楽をもたらしていた。
 快感を吐露すると、彼女は笑みを零した。

「ふふ、ふふふっ……」

 心底愉快と言った様子ではなく、嘲りを含んだ声音だった。
 その笑いに、俺はちくりと胸を刺されるような痛みと小さな不安感を覚えた。堪らず、名を呼ぶ。

「結衣ちゃ――」

 遮るようにして、抱きしめられた。
 ノーブラの胸の柔らかさ。艶やかな髪から漂う甘い香り。
 耳元に感じる、火照った吐息。

「もっと気持ち良くなって良いんだよ。だから、もっと必死に腰振って?」

 妖しく響く囁き声に、一瞬、頭の中が真っ白になった。
 我に返ったのと、抽送速度を上げたのは、同時だった。

「ゆ、結衣ちゃん、結衣ちゃん……!」

 腕にすっぽりと収まる小さな身体を抱き締める。
 彼女は何も言わず、抵抗もしなかった。
 香りと体温、柔らかな触感。
 密着することで得られる感覚は、どれも情欲を掻き立てるものだった。
 俺が息を荒げて、必死に腰を振る中で、結衣ちゃんは言う。

「本当にエッチしてるみたいだね、気持ち良さそう。……でもね、私は何も感じてないんだよ?」

 その言葉に、俺は背筋をゾクリと震わせた。

「気持ち良くなってるのは、お兄さんだけ。年下の女の子に跨って、玩具相手に必死で腰を振って、恥ずかしくないの?」

 分かっていたことだ。
 だが、快楽を夢中で貪る最中に改めて事実を突き付けられると、狂おしい程の被虐感が湧き出てくる。

(そうだ。俺は今、恥じるべき情け無いことをしている)

 それを再認識するも、ペニスは萎えるどころか、ますます硬くなってしまう。男根は擬似膣を内から圧迫し、偽りの媚肉に密着する。
 恥ずかしい男だとの誹りを受けていながら、俺はあられもない声を上げた。

「馬鹿にされてるのに、余計に感じちゃうんだ」

 結衣ちゃんは更に俺を責める言葉を続けた。
 
「作り物のおまんこでおちんちんジンジンさせて、私に意地悪されて金玉キュンキュンさせちゃうなんて……」

 完敗だった。このタイミングで、やらしくも可愛らしい声で淫語を脳に流し込まれるなど、耐えられる訳がない。
 うっとりとした調子で結衣ちゃんが言う。
 ――馬鹿みたい。
 脳が蕩けてしまう様な興奮に、俺は呻いた。

「あ、ああぁっ、も、もうだめだ……! で、出ちゃう……!」

「ストップ」

 結衣ちゃんが俺の身を両手で押し上げた。

「ふふ、そんなに切ない顔しないで? ちゃんと射精はさせてあげるから。でも、自分のタイミングで出しちゃうなんてもったいないでしょ」

 どういう事かと俺が問う前に、結衣ちゃんが言葉を続けた。

「セックスごっこはもうおしまい。射精するなら、もっと虐められながらの方が良いでしょう?」

 下腹部には熱い物が込み上げ、ペニスはドクドクと脈を打っている。
 身体はすぐにでも射精したいと訴えていた。
 それでも俺は、結衣ちゃんの言葉に頷いてしまうのだった。

「今度はお兄さんが下だからね」

 そう言う彼女に従って、俺はベッドに仰向けになった。
 オナホールから抜かれたペニスは、ローションと我慢汁でてかてかと光りながら大きく律動している。
 結衣ちゃんはそれを妖しげな眼差しで見つめつつ、ベッドの上部へ回り、俺の頭を跨いで膝を着いた。

「顔に乗るけど、変なことはしちゃ駄目だからね」

「わ、分かった……」

 頷くと、ショートパンツに包まれた股間が眼前へと迫ってきた。
 白く柔らかな太ももに挟まれながら、彼女の重みを受け止める。

「んぐふっ、むふうっ!」

 顔面を圧迫されて、俺は堪らずに息を漏らす。
 結衣ちゃんが短い悲鳴と共に跳ね上がる。

「ちょっと、くすぐったい。何もしないで!」

「す、すまない。こ、今度は我慢するから……」

「……もう乗ってあげない」

 拗ねたように言いながら、彼女は顔から腰を浮かせたままで、上体を倒した。シックスナインあるいは二つ巴のような体勢だ。
 なだらかな曲線を描く尻が目の前で小さく揺れ、僅かに雌の香りが漂う。
 俺は責めへの期待と扇情的な体勢に胸を高鳴らせるばかりだ。
 結衣ちゃんは指先でペニスを数度揺らした後、くすりと笑いながら、オナホールを亀頭にあてがった。

「ふふふ、ほら、入っちゃうよ。おちんちんに意識を集中させて……?」

 快楽への期待を煽る結衣ちゃんの言葉に、俺は喉を鳴らした。
 自然と下半身に力が入る。肉棒が大きく揺れた。
 しなやかな指で捕まえたそれを、ゆっくりとオナホールへ飲み込ませていく。
 ぬくぷっ……。
 湿ったひだに亀頭のくびれを撫でられ、俺は堪らずに呻き声を上げた。
 結衣ちゃんの小さな笑い声が耳に届きますます興奮してしまう。
 ぬぷぷぷ……。
 ペニスは遂に根元まで、ピンクの玩具に包み込まれてしまった。

「はあっ……はあ……ああぁ……」

「自分で入れた時よりも気持ち良さそうだね」

 そう言いながら、彼女は右手でオナホールを握ったまま、左手を睾丸に這わせた。
 散々弄ばれてきたそこはすっかり開発されてしまっていた。
 軽く握られただけで、身体がビクリと震えた。
 睾丸を揉みながら、ゆっくりとオナホールを上下させる。

「あっ、ああぁっ、あうっ、結衣ちゃんっ……」

 俺は身体を捻る様に身悶えしながら、情けない声を上げていた。

「こうやって、玉々を揉み揉みされながらオナホールで扱かれると……ふふっ、すぐにイッちゃいそう?」

「うう、ううう、イ、イキそうだ……!」

 悔しいが、そうとしか言えなかった。
 男を絶頂へと誘う為だけに作られた玩具で扱かれているのだ。
 湧き上がる強烈な性感には抗い難い。
 加えて、睾丸、陰のうを小さな手で捏ね繰り回されるのも、堪らなく気持ち良かった。

「じゃあその前に、少しサービスしてあげる。一週間我慢出来たご褒美だよ」

 下半身に走る甘い痺れによって、もやの掛かったような頭で何だろうかと思っていると、結衣ちゃんがこれまでよりも高く腰を浮かせた。

「あっ……」

 俺は目を見開き、呆けたような声を上げた。
 
「ふふっ、見えた?」

 結衣ちゃんの上半身を覆う物は、大きめのTシャツだけだ。
 その裾がふわりと広がって、中を覗えた。
 ほっそりとしたお腹の先にある膨らみ。
 重力に従って下を向いたおっぱい。ローズピンクの先端は勃起している様にも見えた。
 裸体の一部にそれを見せるのではなく、着衣の内を覗くようにして視界に映させる――男の性をくすぐるようなやり方に、俺はまんまと嵌められた。

「くすっ……鼻息荒くしちゃって、やらしいんだから」

 そう言って、結衣ちゃんは睾丸を強めに引っ張りながら、オナホールによるピストン運動を再開した。

「あっ、ああぁあ、あああ……!」

 視界に極上の景色を捉えたまま、股間を蕩かされる。
 複雑に配置された無数のひだや粒が、いきり立つペニスをぬるぬると撫で上げる。心地良い摩擦に肉棒が溶けていくような錯覚に陥る。
 絶頂へ向けて、せり上がろうとする睾丸を引っ張られながら、手の内で転がされる。その被虐的な快感が、腰の奥で渦巻く熱い物を更に煮え滾らせる。
 頭がどうにかなりそうだ――そんな不安が脳を過ぎったかと思えば、すぐさま結衣ちゃんによって現実になされてしまう。

「……むぐぅ!」

 もう乗らないと言っていたはずが、股間を顔面に押し付けられていた。
 激しい性感に翻弄されて息を切らしていた所を圧迫される。

「んんむっ! んんんんーっ!!」

 流石に耐え切れず、俺はくぐもった呻き声を上げながら彼女の太ももに掴み掛かるがそれでも腰を上げてもらえる気配はなかった。
 それどころか、ぐりぐりと布地に隠されたままの秘所を押し付けられる。
 苦しい。間違いなくそのはずなのに、全身がカッと熱くなっていく。
 肉の幹ははち切れる寸前まで膨れ上がり、睾丸は遂に彼女の手を抜け出して、ペニスの根元に引っ付いた。
 年下の女の子に股間で顔を押さえつけられ窒息を意識するような呼吸困難の中にありながら、これ以上ない程の快楽と多幸感が身を包み込む。
 もはや彼女の太ももを掴んでいる余裕もなかった。
 全身の筋肉が硬直し、ピクリと小さく震えた。
 次の瞬間、意識が飛ぶような激しい快感が身を貫いた。
 まさに頭がどうにかなるような、持ち得る生命力を全てそこに賭したような射精だった。
 ぶびゅるるっ! びゅるるっ! びゅくっ!
 白濁のマグマを噴き上げる火口に蓋をするように、結衣ちゃんはオナホールを強く押し付けていた。

「ふふ、凄い、ビクビク震えてるのがコレ越しでも分かるよ」

 そう言いながら、ようやく腰を浮かせてくれた。

「はあっ、はああっ、はあっ、はあ……! あううっ!」

 結衣ちゃんがペニスを玩具から引き抜いた。その際の摩擦で、俺は続け様の射精に至っていた。
 ぴゅるっ!
 量こそ少ないものの良く飛んだらしい。小さな悲鳴は、放たれた精液を身体のどこかで受け止めてしまった結果だろう。

「もうっ、どれだけ出すつもり?」

 起き上がり、俺の脇に座りなおした彼女がそう言った。
 薄めの白濁液が頬を伝っていた。

「はあ、はあ、はあっ……」

 俺は真っ赤な顔で荒々しい呼吸を繰り返すばかりだ。
 その様子に彼女はばつの悪そうな顔で申し訳無さそうに言った。

「ごめん、やり過ぎちゃった。大丈夫?」

「はあ……はああ……。大丈夫……気持ち良過ぎて、死ぬかと思った……」

 半分は本当だった。残りは結衣ちゃんを不安にさせない為の冗談めかしだ。
 実際の所、気持ち良過ぎて死にそうだったのか、死にそうになる程責められるのが気持ち良かったのか、どちらとも言えなかった。
 天井をぼんやり眺めつつ、呼吸を落ち着かせていると、結衣ちゃんに「ねえ」と声を掛けられた。
 顔を向ける。結衣ちゃんは、女の子座りの格好で太ももに手を挟みもじもじとしている。

「も……もう一回ぐらい出来るよね?」

 嬉しい言葉だった。――それがもう少し経ってからなら尚良かったのだが。
 俺は少し考えてから、せめて夕飯を済ませてからにしようと提案した。
 
 ――それが良くなかったのかも知れない。
 間を置いてしまったせいで、余計に期待させてしまったのか。
 翌朝の俺は、股関節がガクガクと笑いっぱなしで、錆びた機械の様な動きで稲岡家を後にすることになった。



この話は、ダウンロード販売中の作品の番外編です。

販売中の作品についてはこちらから
皮を被せて遊ぶ美少女(ダウンロード販売サイトへのリンク)

スポンサーサイト
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!
[PR]

PageTop

射精解禁日#前編

ダウンロード販売中の作品の番外編で、短編です。
この話だけでも完結しているので、本編未読の方でもお楽しみいただけるかと思います。

販売中の作品についてはこちらから
皮を被せて遊ぶ美少女(ダウンロード販売サイトへのリンク)



 会社からの帰り、俺は一度自宅に寄ってあらかじめ用意していた荷物を手に取り、仕事着のスーツ姿のままで彼女の家に向かっていた。
 少し変わった出会いを経て、交際へ至った年下の女の子――稲岡結衣(いなおか ゆい)――俺は彼女を結衣ちゃんと呼んでいる。
 
 整った顔立ちを脳裏に浮かべる。
 艶やかな髪と強気な瞳。
 どこかサディスティックな微笑を湛える口元。
 彼女の顔を思い描くだけで、股間がムズムズと疼き出す。
 膨らみ始めたペニスが下着に擦れるだけで、甘いものが下半身に広がっていく。
 溜まっているな、と自分でも思う。
 そもそも日中から、仕事に支障をきたす勢いで、エロい妄想が湧き出てきていた。
 無理もないだろう。
 俺は結衣ちゃんから一週間の射精禁止を命じられ、更に睾丸への悪戯を受けて来たのだ。
 オナホールを所持していたのを、彼女に知られてしまったことが切っ掛けだった――。

「へえ。あれだけ私が虐めて抜いてあげてるのに、自分でもするんだ?」

 冷ややかな声音でそう言われた直後、俺はオナホールを彼女へ差し出し、頭を下げていた。
 女には理解し難いことかも知れないが、エッチ(例えそれが一方的な責めに合うだけでも)とオナニーは別腹だ。
 交際中の異性が居ようとも自慰はする。男なら誰だってそうだ。
 ――そう弁明しても良かったのだが、責められ虐げられることが身に染み付いてしまっている俺は謝罪を口にしたのだった。
 結衣ちゃんは一瞬、きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべて言った。

「じゃあ、罰として一週間のオナニー禁止ね。もちろん、私の手でも射精させてあげない」

 ――それが先週末、俺の自宅で起こった出来事。
 そして一週間後の今日は、射精解禁の日だ。
 射精管理を受けるのは初めてのことではなかった。だが、慣れる程繰り返した訳でもない。
 禁じられる程、それが可愛い女の子に命じられていると考える程、肉欲は凄まじい勢いで俺を苛んだ。
 加えて、睾丸を小さな白い手でムニムニと揉まれたり、瑞々しい唇でちゅぱちゅぱと吸われたりされながら、ペニスは弄って貰えない――そんな意地悪なプレイを間に挟みつつの射精禁止だ。
 情欲は際限なく込み上げ、肉棒は今か今かとオーガズムを待ち望んでいる。
 稲岡家のインターホンを鳴らす頃、スラックスの股間はパンパンに膨らんでいた。
 
 初夏を迎えたばかりで、夜風はひんやりとしたものを孕んでいる。
 それを頬に受けながら、じっと待っていると開錠の音が二度続いた。
 開かれた扉から覗く顔には、微笑が浮いていた。
 結衣ちゃんは部屋着姿だった。
 Tシャツに、ショートパンツ。
 白い太ももに視線が吸い寄せられる。
 俺が生唾を飲むのと、怪訝な声を掛けられたのは、同時だった。

「い、いや、なんでもない。……お邪魔します」

 そう言うと、彼女は何がおかしいのか小さく笑みを零す。

「?」

「ううん。なんだか余所行きの声だな、って」

 どうも仕事の空気を引きずったままのようだ。
 俺は苦笑しつつ一つ咳払いして、部屋へ上がった。
 両手の荷物を受け取りながら、彼女が言う。

「夜は涼しいけど、昼間はもう暑いよね」

「ああ、そうだな。節約だとか言って、エアコン代をケチってるもんだから、事務所の中がサウナ状態で、汗だくだったよ」

「ふふっ、じゃあ先にシャワー浴びてくる?」

「お、おう」

 彼女は何の気も無しに言ったのかも知れないが、俺はドキッとしてしまう。
 性行為の前に身体を洗う女の姿が脳裏に過ぎっていた。



 風呂を上がり、彼女の部屋に向かう。
 スーツが綺麗に整えられて、壁に掛けられているのを見て、関心する。
 彼女と家庭を築くことになれば、こうして世話を焼いて貰えるのだろうか。
 そんなことを考えて、俺は頬を緩ませていた。
 惚気めいた思考はすぐに肉欲的な色を帯びていく。
 家庭、結婚、新婚、初夜。短絡な段階を踏んで、淫らな情景を思い描いてはペニスを膨らませる。
 それを見逃す結衣ちゃんではない。
 
「ねえ、もう出したくて仕方ないんじゃない?」

 愉しげに言いながら、スウェット越しに男根を撫でる。

「ゆ、結衣ちゃん……」

 俺は堪らずに切羽詰った声を漏らした。
 出したくて仕方ない。その通りだった。
 ふふん、と、どこか勝ち誇るような笑みを零しつつ、結衣ちゃんが俺の足元にしゃがみ込んだ。

「まずは、本当にオナニーしてないのか確認してあげる」

 言うが早いか、ズボンを一気にずり下ろす。
 テントの張ったトランクスが姿を見せた。
 結衣ちゃんはそこに指を掛けながら、俺を見上げた。
 淫靡に輝く瞳は、とても年下の女の子のものには見えなかった。
 下着を脱がされ、いきり立つ肉棒を露にさせられる。
 一時は彼女に包皮を弄ばれて亀頭が隠れるまでになっていたが、今では元通りだ。
 先端にはすでに我慢汁が滲み出していた。

「この様子なら、オナニー我慢できたんだね?」

「あ、ああ……」

 俺が頷くと、結衣ちゃんは睾丸を手の平で包み込んだ。
 それを優しく揉みながら、言う。

「今日は射精させてあげなくちゃいけないね。……どんなことをして欲しい?」

 怒張の根元にぶら下がる、玉と袋。そこに走る鈍い痛みと甘い疼き。
 竿に比べて感度は劣るものの、急所を鷲づかみにされている状況に倒錯的な興奮を覚えてしまう。
 加えて、陰のうを引っ張られると肉棒も小さく揺れる。僅かな刺激とは言え、今の俺を悶えさせるには充分な威力だった。
 透明な雫が亀頭の先から滴り出す。
 普通なら、精々鈴口の周囲を湿らす程度の量しか出ないものだが今日は違った。
 つつーと肉の幹を伝い落ち、睾丸にまで達する。
 それでもまだ水気は充分過ぎる程に残っている。
 ぬちゅっ、ぬちゃ。
 結衣ちゃんが玉を責める手付きに合わせて、粘着質な音が鳴る。

「凄いね」

 彼女は俺の痴態に関心しながら、立ち上がった。
 真っ直ぐに向けられる瞳は熱に浮かされたような潤いを持っていた。
 鮮やかな唇が小さく突き出され、口付けを求められる。
 それに応じると、彼女は小さく呻いた。
 手はそのまま、睾丸を責めている。
 互いに舌を伸ばして絡ませながら、俺はますます性欲が高まっていくのを認めた。
 身体が熱を帯びて、思考が鈍くなっていく。
 睾丸を揉み解される悦びとキスの気持ち良さに溺れていく。
 ペニスの先から更に大量の我慢汁があふれ出し、甘い痺れが込み上げる。
 結衣ちゃんが舌を引っ込め、ゆっくりと顔を離した。
 キスが終わる頃、俺はすっかり蕩けてしまっていた。
 
「ふふ、見てこれ」

 眼前にかざされた手の平は、糸引く我慢汁で濡れ光っていた。
 悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女が言う。

「こんなに濡らして、お兄さんったらいやらしい」

「う、うう……そんなことを言ったって……」

「はいはい、言い訳は良いから。汚さないように服を脱がせてあげる」

 されるがままに服を脱がされる。
 結衣ちゃんは着衣のままで、俺だけが全裸に剥かれてしまう。
 一方的に裸になる。その行為は心地良い被虐感を俺に覚えさせた。
 身を小刻みに震わす俺は、彼女の方を向いていられずに、顔を背けた。

「私も汚す前に脱いじゃおうかな」

 思わぬ言葉に、視線を戻す。
 Tシャツの裾に人差し指を引っ掛けて、布地をめくり上げているところだった。
 ほっそりとした白い腹が露になり、俺は生唾を飲んだ。
 肌の露出面積はそのままどんどん広がっていき、やがて胸の膨らみに差し掛かる。

「あ……結衣ちゃん……ブラジャー……」

 下半分程が露出した乳房を覆う物は何も無かった。
 彼女が笑う。

「うん、さっきお兄さんがシャワー浴びてる最中に外しちゃった。誘惑しようと思って」

 誘惑。
 
(誘惑されているのか、俺は)

 挑発的な表情を浮かべる結衣ちゃんは、乳首が見える寸前のところまでおっぱいを露出している。
 そんな姿を見せ付けられると、被虐嗜好から離れた劣情が湧いて来る。
 目の前にある女体を本能のままに貪りたい衝動に駆られる。
 ペニスはそれに呼応するかのように、大きく脈打った。

「その顔は……エッチしたくなっちゃったんでしょ?」

 隠し事を暴くかのような声音と、愉しげな表情。
 俺は彼女の名を掠れた声で呼びつつ、手を伸ばす。

「でも、だーめっ」

 ひらりと俺の手をかわした結衣ちゃんはそのまま、ベッドへ飛び乗った。

「こんな玩具でおいたしちゃう悪い子にはお仕置きが必要でしょ?」

 そう言って、一週間前に俺が差し出したオナホールを手の上で弄んでいる。
 ピンク色の性玩具は、細い指の間でぐにゃぐにゃと潰れたり戻ったりを繰り返す。

「ゆ、結衣ちゃん、でも、一週間のオナニー禁止は守ったんだから……だから……た、頼むよ」

「ふふ、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。落ち着いて?」

 彼女に諭され、俺は我に返った。
 性欲は人を狂わす力を秘めているようだ。我ながら情けない姿を見せてしまったものだと思う。
 ペニス丸出しで「頼むよ」などとみっともない声を出す。男としても、年上としても、無様だった。

「……そう落ち込まないで。ほら、おいで?」

 笑みを浮かべた彼女が両手を広げて俺をベッドへと招く。
 やや萎えてしまったペニスを揺らしつつ、俺はその誘いに乗った。
 ベッドの上で、二度目のキスをする。
 舌先が擦れ合う度に甘い痺れが走る。唾液の音が響き、小さくなり掛けていた情欲の炎が再び燃え盛る。
 口元を繋げながら、俺達は臨戦態勢へともつれ込んでいった。
 結衣ちゃんに覆いかぶさりながら、柔らかな唇を貪る。
 俺はここぞとばかりに彼女の身体に手を伸ばすが、軽くいなされて終わった。
 それどころか反対に肩を押されて口付けを中断させられてしまう。

「私の身体に触って良いとは言ってないよ」

 結衣ちゃんの言葉を受けて、俺はまたしてもみっともなく快楽を欲してしまいそうになったが、ここはぐっと堪えた。
 決まり悪い顔を浮かべる俺を見つめて、彼女は小さく笑った。

「お兄さんの今日の相手はこれでしょ?」

 そう言って、脇に放り投げてあったオナホールを手に取る。
 玩具と一緒に渡したローションは、ベッドに寝転んだままでも手が届く範囲に、予め仕込まれていたらしい。
 結衣ちゃんは愉しげな顔つきで、ローションボトルの蓋を外した。
 しなやかな指が踊る様子を、俺は黙って見つめていた。
 開かれたボトルをぎゅっと握る。細長い注ぎ口から粘性のある雫がぷっくりと顔出した。
 それをトロリとオナホールの入り口へ垂らしながら言う。

「これって気持ち良いの?」

「え? そ、それは……」

 なんと答えれば良いのか、俺は言葉を詰まらせた。
 その反応だけで充分だったのだろう。
 どこか嘲りを含んだ調子で「気持ち良いんだね」と、言われてしまった。
 俺はますます反応に困り、頬を掻くしかなかった。

「ふふ。でも……気持ち良いのかどうかは、お兄さんが実際に使っている所を見てみないと分からないよね」

 結衣ちゃんは愉しそうに言って、更に言葉を続けた。

「私が手で扱いてあげても良いけど、それじゃあ”お兄さんが使ってる感”が無いし……自分の手でオナニーは、一週間ぶりの射精としてはちょっと可哀想かな」

 しばし考え込むように唸る。
 俺は黙って待っているしかなかった。
 性欲の処遇をあれこれ思案されている――考えて見ればおかしな状況だ。
 まさに射精を、ペニスを、管理されていると言って良い。
 倒錯的な興奮が胸に込み上げてくる。
 俺は思わず「オナニーするから罵ってくれ」などと口走り掛けるが、先に彼女が声を上げた。

「こうしようか。ほら、見てて」

 オナホールを握った手を、下半身へと伸ばす。
 首を曲げて、その行方を追っていると、結衣ちゃんは自身の太ももに、ピンク色の玩具を挟み込んだのだった。

「脚で挟んで固定しててあげるから、そこに向かって腰振って? ふふっ、セックスごっこだよ」

「セ……セックスごっこ……」

 背徳的な響きだった。
 何も彼女の味を知らぬ訳でもないのに、今は『ごっこ』しか許されない。
 意地悪な光を宿した瞳に見据えられながら、俺は火照った息を漏らした。
 結衣ちゃんに協力して貰いながら、オナホールの入り口とペニスの角度を合わせる。亀頭の先に触れる冷たさは、それが女体ではなく人工物であることをしっかりと示しているようだった。

「このまま、おもちゃのおまんこにぬぷぷぷ~ってしてごらん? どんな顔になっちゃうのか、見ててあげるから」

 そう意地悪く、被虐の底へと誘う彼女の顔は上気していた。
 俺を虐めて興奮しているのか。そう思うと、悦びが込み上げてくる。
 雌を組み伏せ滾った肉棒でよがり狂わせる――そんな荒々しい雄の悦びとは正反対のものだ。
 むしろ女のそれに近い。愛しい男が、服を脱いだ自分を見て剛直をそそり立たせる様を熱っぽく見つめるような心境とでも言えるだろうか。
 背筋をゾクゾクと震わせながら、俺は彼女の名を呼ぶ。

「結衣ちゃん……!」

 彼女はやや間を置いてから、一言だけ発した。
「入れて」と妖艶に。
 俺は催眠術にでも掛けられたかのように、頭を空白にして腰をゆっくりと突き出した。
 視線は彼女を真っ直ぐに捉えたまま、逸らすことが出来ない。
 その瞬間の結衣ちゃんは色気に満ちていた。
 蕩けるような甘い顔――とは程遠い、意地悪で、愉しげで、圧倒的優位を誇るような勝気な笑み。そこに散りばめられた発情の色が、その表情を単なる悪女面にはせず、痴女然とした淫靡な空気を纏わせていた。

「あっ……はう、はい、入った……」

 俺は情けなく震えた声で、うわ言のように告げた。
 興奮に苛まれる身体は酷く敏感になっていた。



射精解禁日#後編

PageTop

邂逅、それから#後編

 鼓動を激しくさせながら、彼女を見上げる。
 真季はにこりと笑みを浮かべ、前屈みになった。鼻先が触れ合うほどの距離で言う。

「手や足は無し。もちろんセックスなんて論外。……そうじゃなくてね、貴方なら知ってるんでしょう? もっと愉しいこと。男の子はやらしいこと調べるのが得意でしょう?」

 そう言い終えた真季が、本井に向けて更に顔を寄せる。
 キスかと目を瞑る本井だが、軌道は右に逸れていった。耳元に火照った吐息が吹き込まれる。

「ひゃうう、ま、真季さん……」

「ふふ。さあ……早く言いなさい。何も無いなら、私は帰るわよ」

 本井は真っ赤な顔で視線を泳がせていたが、不意に立ち上がった。
 真季は、彼の身体の動作に合わせて、ぶるんっと揺れた肉棒に視線をやり、それからゆっくりと顔を見上げた。

「ま……真季さん……。お、お尻……」

「また叩けって言うの?」

 流石の本井も、それを言うのは躊躇われた。
 何せ排泄にまつわる器官だ。嫌悪感を抱かれてもおかしくない。それを露にされた場合、どんな顔をすれば良いか分からない。
 真季が口にした叩けば良いのかと言う問いには、何とか首を横に振った。
 レンタルショップでも見せた饒舌はすっかり鳴りを潜めていた。
 本井は更に顔を赤く、耳まで染めて、声を絞り出す。

「お、お尻の穴……こっ、肛門を弄ってくれませんか……」

「え……?」

 真季がきょとんとした表情を浮かべる。
 その反応に、本井はしくじったのかと苦いものを顔に滲ませた。

(真季さんは一体何を望んでいたんだ……!?)

 呼吸を荒くさせつつ、本井は彼女を見ていられずに目を瞑って、更に顔を背けた。
 気配だけで感じ取る。真季が立ち上がった。

(帰る、と来るか、汚い、と来るか、もしくはビンタでも飛んで来るのか……)

 苦々しいものを胸に広げつつある本井の顔を、真季が覗き込む。

「本井君」

 穏やかな声音だった。
 恐々と目を開くと、微笑を浮かべた真季の顔が映る。

「……貴方、とんでもない変態ね」

 そうは言うが、彼女も然して大差ない。
 何せ、変態だと本井を罵った舌の根も乾かぬ内――時間にして十数分後には――全裸の彼を膝に乗せて、嬉々とした表情を浮かべているのだ。
 
 二人はソファからベッドへと移動していた。
 右手は白く薄い膜に覆われていた。医療用のゴム手袋だ。
 素手のままの左手には、ローションのボトルが握られている。
 どちらも本井が用意したものだった。

「真季さん……準備は済んでますから、その……汚くは無いはずです」

 スパンキングを受けていた時と同じ体勢で本井が言った。

「ふふっ、どうして準備なんかしていたの? 貴方、もしかしてどっちもイケる口?」

「い、いえ……。そう言う趣味はありません。ただ……その……排泄後にすぐ弄ると、腹が緩くなってしまうんで……AVを借りに行く前にと思って……」

「ふうん、アナルを弄るのも大変なのね」

 そう述べた真季は、ゴム手袋に包まれた手で、本井の尻をむにむにと揉んでいた。彼女にアナル責めの知識は殆どない。そうした嗜好の持ち主が居ることを知っている程度だ。

「ま、真季さんに弄って貰えるなら、苦労も報われると言う物です」

「期待に沿えるかは分からないわよ」

 そう言って、尻を弄んでいた手にローションを塗りたくる。

「痛かったら、すぐに言いなさいよ。こんなことするの初めてなんだから」

「は、はい」

 本井は、真季の気遣いを喜びつつ、アナルへの刺激に期待を膨らませていた。
 真季の指先がひくつくアナルにあてがわれる。
 幾ら潤滑油が充分とは言え、入るのだろうか。そんな疑問を浮かべつつも
、真季は指を軽く押し込んだ。
 つぷっ……。
 排泄器官に異物を感知した本井の身体が小さく震えた。
 ぬぷぷぷ……。
 白い指が第二間接まで挿入された。

「凄い……入ってく……」

 きゅうと締め付けられる感覚を認めながら、真季は呟いた。

「はあっ、はあ……真季さん……」

 本井の声は、うっとりと湿っぽかった。
 まだまだ浅い挿入だ。物理的な刺激は薄い。それでも、頭の中にもやが掛かっていくような興奮に襲われていた。

「根元まで入れても……大丈夫かしら……?」

「う、うう、大丈夫です。全然、痛くはありませんから……」

 本井の答えを受けて、真季は更に奥深くへと指を進めた。
 ぬくぷぷっ……。
 十字に重なるような体勢上、挿入部をしっかり目視することは出来ないが、それでも充分に妙な光景だった。
 本井の尻の谷間に、自身の指が飲み込まれていくのだ。

「ふう、うっ、ああ……」

 本井はピクピクと震えつつ、熱っぽい息を吐いた。
 収縮する肛門に感じる、硬い指の存在。真季の細い指が腸内に挿入されている悦びに、本井は酔い痴れていた。

「……前立腺ってのが気持ち良いのよね?」

 そう口にしながら、その器官を探り当てんと指を折り曲げる。
 クリーンヒット――とはいかなかったが、腸壁を擦られ、じわりっと込み上げる快楽に本井は悶えた。
 腹の中で蠢く異物の刺激は堪らなく心地良かった。
 排泄器官を用いた自慰によって、性感帯として開発済みのそこは、酷く敏感だった。
 くに、くにっ。ぬちゅぬちゅっ。
 曲げ伸ばしと出し入れによる刺激。それを受ける度に、本井は喘ぎ声を上げた。
 美貌の女上司に指でアナルを犯される悦びに、身が焦がされていく。
 ゴム手袋に覆われた指は、やがてその器官を探り当てる。

「あうううっ……!」

 これまでとは色の違う嬌声に、真季は少し慌てた。

「だっ、大丈夫?」

「うっ……くふう……。大丈夫、大丈夫です……い、今、触られたところが、前立腺です……」

「……ここ、かしら?」

 そう問いながら、それに向かってトントンとノックするように指を当てる。
 ビクッビクンッ。本井は電流の走るような快感に、身を大きく震わせた。

「そっ、そうです、あ、あああぁ……真季さん……!」

 男の急所を探り出した真季は、愉しげにそこを弄んだ。
 遠慮がちだった指の動きは「もっと強くても大丈夫」との言葉を受けて、激しくなっていく。
 ぐりっ、ぐにっ、ぐぐぐ……。
 緩急のある圧迫刺激に次いで、ゆっくりと力強く押し込まれる。
 前立腺に広がる快楽は、ペニスにまで及んでいく。
 内からじわじわと迫り来る快感は雌のそれに似ているが故か、肉棒は縮こまってしまう。勃起に代わって悦びを示すのは、おびただしい量の我慢汁だった。
 本井は先にも気にしていた、衣服への付着を口にするが、真季は構わないと言った。

「それより……どうせならもっと、愉しませて貰おうかしら」

「もっ、う、うう……もっと……?」

 困惑した声を上げる本井に対して、真季が命じる。
 仰向けになりなさい、と。

「う……仰向け……ですか……」

「そうよ。辱められるのも好きなんでしょう?」

 確かにそうだが、と。本井は踏ん切りが付かない様子だ。
 今の体勢と違って、ペニスから表情まで全て見られてしまう。考えるだけで、頭に血が上っていくのを感じる。
 しかし、心地良い被虐感の中にあっては、断るなどと口にすることは出来ない。
 どうしようもなく、本井はただ真季の名を口にした。

「……このまま止めちゃう? それでも私は良いわよ」

 そう問いながらも、肛門に捻じ込んだ指をくにくにと淫靡に揺らす。
 指先の動きに合わせて湧き出る快感が、本井の理性を蝕んでいく。
 気持ち良く痺れていく前立腺が、更なる被虐をと、急き立てる。
 ちゅくっ、ぬちゅ。
 ローションが湿った音を立てる。
 それを耳にしながら、責められる悦びに身を委ねる。

「なっ、なります、仰向けに……!」

 堕ちた――とも言える本井の反応に、真季は深い笑みを浮かべた。

「だったら早くしなさい」

 真季が指を引き抜くと、本井は一つ身震いしてからのそのそと動き出した。
 彼は荒っぽい息を吐きながら、シーツに背を預けた。
 寝転んだ本井の閉じられた脚を軽く叩いて、真季が言う。

「そんな格好じゃ、指は入れられないわよ」

「そう……そうですよね……」

 羞恥を忘れるほどの興奮に衝き動かされて仰向けになったが、物理的な刺激が止んだ状況となれば、理性が働いてしまう。
 上司である美女の前で、全裸で股を広げて肛門を露にする。
 冷静に考えれば考えるほど、恥辱を感じずにはいられない。
 身体を小刻みに震わすばかりの本井に対して、真季は意地悪な笑みを向けて口を開く。

「ふふっ。恥ずかしいわよね。お尻に指を入れてくださいって、お願いするように脚を開くなんて」
 
 本井は反応に窮しながらも、小さく頷いた。
 笑みをますます深くして、真季が言う。

「でも……指でお尻の穴を虐められるのが好きな変態なんだから、仕方ないわよね」

「ううう……真季さん……」

 変態だと罵られているにも関わらず、鼓動が高鳴っていく。
 真季への好意が膨らんでいく。

「まっ、真季さん……俺の尻をもっと犯してください……」

 そう口にしながら、本井は震える脚を開いていった。

「ふふっ……この変態……」

 罵倒と言うよりは独り言のように呟いて、真季は露になったそこへ顔を近づけた。

「真季さん……そ、そんなにじっと見ないでください……!」

「貴方のここ、物欲しそうにひくひくしてるわよ?」

 男が女の羞恥を煽るに使うような台詞を受けて、本井は苦しげな表情で顔を背けた。

「それに……なによ、見るなって言うわりには、興奮してるじゃない」

 真季の目に映るペニスは、大きく膨らんでいた。
 その先端からは情欲の証がとろとろと溢れ出している。
 彼女が笑みを漏らす。その吐息が肥大した男根をくすぐり、本井は短く喘いだ。

「まあ良いわ。指、入れるわよ……?」

 真季は本井に向けて、白い手を掲げた後、ローションを追加で塗っていった。濡れ光る細い指を見つめる本井の目は劣情に潤んでいた。
 手の平を上に向けて、中指の先をそこにあてがう。

「ほら……入っていくわよ……」

「は……はいっ……」

 ぬくぷっ……ぬぷぷぷ……。
 二度目となると、遠慮はなかった。
 一気に根元まで挿入してから、大丈夫かと問う。

「はい、大丈夫……です」

 本井がそう答えると、真季はゆっくりと指を動かし始めた。
 ちゅくっ、ぬちゅ。
 湿った音を立てながら、前立腺に甘いものを響かせていく。

「うっ、あう……あああぁ……」

 蕩けるような呻き声を上げながら、本井は悶えるばかりだ。
 それを愉しげに見つめながら前立腺を責めていた真季だが、不意に指の動きを止めてゆっくりと後退させていった。
 引き抜かれる際の摩擦に腸壁や肛門が気持ち良く疼き、本井は間抜けな声を上げた。

「あふうっ……。真季さん……?」

「ん? ふふ……二本まとめて入りそうだなと思ってね」

「は……入ると思います……」

 事実、彼女のよりも太い自分の指が二本入るのだから、間違いない。
 本井が答えると、真季は嬉々として指を挿入した。

「あああっ……」

 人差し指と中指をまとめて捻じ込まれる。
 これまで以上に強い挿入感を得て、本井は恍惚として身を震わせた。
 
「すんなり入ったわね。どれだけ自分で弄ってるのかしら」

 嘲笑を漏らしつつ、真季は指に感じる圧迫感を愉しみながら、責めを再開する。二本の指先で前立腺をこりこりと撫でる。

「あっ、あああぁ……」

 内から響く重たい快楽に、本井は喘ぎを漏らし、小さく痙攣する。
 そうして内性器を弄ばれていると、男根は徐々に萎んでいった。
 それを見た真季が、アナルを貫く指を曲げ伸ばししつつ、空いている左手をそこへ伸ばした。
 ぺちぺちと軽く叩いて、本井へ問い掛ける。

「お尻を弄ってると、こっちは元気なくなるのね。……これじゃあいつまで経っても射精出来ないんじゃない?」

「あう、う、いえ……そ、その内出ます……」

「そうなの? 男の人の身体って不思議ね」

 などと言いながら、もう一度、意味もなくペニスを叩く。
 その刺激に萎えていた肉棒がむくむくと膨らみ出した。
 真季は手の平でそれを感じ取りながら、もしかして、と思考を過ぎらせた。

「お尻じゃなくて、これも叩かれたら気持ち良いの?」

「それは……わ、分かりません」

 考えても見なかった。
 尻を打たれるように、ペニスを虐げられる。その感覚は如何なるものか。
 不安と期待の両方を胸に広げつつある本井に対して、挑発的な笑みを浮かべる真季が言う。

「だったら、試してみる?」

 彼が頷くと、真季は左腕を振り上げた。
 肛門に挿入されたままの指が妖しく蠢く。
 ちゅくっ、ぬちゅっ。
 前立腺を激しく責め立てながら、真季の平手が怒張したペニスを打つ。

「あうううっ……!」

 本井は大きく身震いし、あられもない声を上げる。
 尻たぶへのビンタに比べて、幾分か手加減されていた。
 痛みは薄く、寧ろ心地良い痺れがペニスに走っていた。
 ぺちんっ、ぱちん。と真季は連続でビンタを放つ。
 もちろん、前立腺への責めも緩めることなく続けている。

「んくっ、うっ、あ、あああぁっ、はあっ、ああぁ!!」

 切羽詰った鳴き声を上げる本井。
 内と外からじわりじわりと快感が迫ってくる。
 男女の性行為として本来あるべき姿とはかけ離れた、倒錯的で変態的な行為の果てはすぐそこまで来ていた。
 真季の指を強く締め付ける肛門。ビンタを受けて我慢汁を撒き散らしながら揺れるペニスの根元に、睾丸がきゅっと密着する。

「あああっ、真季っ、真季さん……も、もうっ……!」

 本井はそう声を上げつつ、彼女の顔へと視線をやった。
 両手を激しく使っている為か、頬が赤らみ、薄っすらと汗が滲んでいる。その様子に堪らない色気を感じると、本井はいよいよ込み上げる熱い物を抑えられそうになかった。

「でっ、出る、出ます、ああ、ああぁぁっ!!」

 全身をガクガクと痙攣させながら、そう叫ぶ。
 真季はぎゅうう、と強く前立腺を圧迫しながら、ビンタと共に微笑んだ。

「良いわよ。出しなさい」

 ぺちんっ、と最後に一発加えられた衝撃が引き金となり、本井は果てた。
 ぶびゅくっ、びゅくっ! ぴゅっ!
 ペニスは怒り狂うが如く激しく律動し、白濁液を迸らせた。
 それは本井自身の顔面にまで至るほどの量と勢いがあった。
 彼の絶頂は凄まじいものだった。
 火照った息を吐く真季は、呆然とするしかなかった。
 ややあってから、静かに指を引き抜く。
 本井はまだ息を切らして胸を大きく上下させている。
 精液にまみれた彼を見下ろし、真季は思う。
 ――これはちょっと癖になるかも知れない。
 男を一方的に暴力と快楽で翻弄し、オーガズムへと追い込む。雌の体内ではなく、自らの身へと種子汁をぶちまけさせる。
 嗜虐の愉しさを空想ではなく、身を持って味わった真季は、それを思い返すかのように自身の手の平へと視線をやった。
 初夏の夜半を彩る虫の音が遠く響く中で、彼女は雌の部分が酷く熱を帯びているのを認めて、淫靡な笑みを浮かべた。


 おわり

 目次記事へ戻る

 トップページへ戻る

PageTop

邂逅、それから#中編

(……結局付いて来てしまった)

 レンタルショップから徒歩で数分の所に位置する本井の住むアパートの駐車場。そこに真季は立っていた。隣には、もちろん彼が居る。
 あれから、幾つか押し問答を繰り広げた挙句の結果だった。
 絶対に手は出さない、なんなら手足を拘束しても良いと言う本井の勢いに、真季は負けてしまったのだ。

「さて、真季さんどうします? ガムテープか何かで俺の手足をぐるぐる巻きにしてから部屋に上がります?」

「……別に良いわよ。そんなことしなくても」

 ぶっきらぼうに言う真季だが、自暴自棄と化している訳ではない。
 無駄口の多さには辟易させられることもあるが、性根の悪い男でないことを知っているからだ。
 少なくとも仕事の場では、利己を追求し他人を陥れるような姿を見たことがなかった。

「真季さんのようなお美しい女性がそう軽率とは……悪い虫に捕まっても知りませんよ?」

「もう捕まっているようなものじゃない」

 真季の言葉に本井は意外そうな顔をした後、ぽつりと呟いた。それもそうか。
 仕切りなおすように後頭部を掻いた後、一階端の部屋へと向かう。

「さあ、どうぞ。大した部屋ではありませんけど、一応清潔にはしているつもりです」

 扉を支えつつ、中へと促す本井に従い、真季は足を踏み入れた。
 隅に埃や砂利の無い三和土には、スニーカーと革靴がそれぞれ一足ずつ、きちんと並べられていた。
 関心しながら玄関を抜けて、リビングへ。
 そこも綺麗に整頓されていた。

「独り暮らしの男にしては綺麗にしている方でしょう?」

「そうね……。潔癖症か何か?」

「まさか」

 そう笑った後、本井は不意に真面目な顔で言った。

「真季さんですよ。デスクをとっちらかしてる俺に、身の回りが汚いと心まで汚くなると教えてくれたのは」

「そう……だったからしら」

 仮にそうだとしても、それはどこかで耳にした言葉の受け売りだ。
 目の前ある整然とした室内の様子と、自宅の様子とを脳内で比べて、真季は決まりの悪い心持だった。

「まあ、それは良いです。それよりも、早速始めましょうか?」

「は、始める?」

「いやだな。叩いてくれるのでしょう? 俺の尻!」

 そう言って、本井は真季を両手をとって、ずいと顔を近づけた。
 真季が小さく肩を震わせた。茶色の髪が揺れ、甘い香りが弾けた。
 本井から目を逸らした彼女の頬は、薄っすら赤らんでいた。
 惚れた腫れたとは無縁の生活がしばらく続いていたせいだろうか、と真季は頭に血が上っていくのを認めつつ、口を開く。

「わ、分かったわ。その為に……来たんだからね。そ、それで、どうすれば良いかしら?」

「ふむ……そうですなあ……」

 長い顎をさすりながら、本井はしばし思案した後、ソファを指した。

「そこにしましょう。真季さんは座ってください。俺は膝の上に乗るようにして寝そべりますから」

「分かったわ……」

 真季は静かに深呼吸をしてから、ソファに掛けた。
 これから本井の尻を引っ叩く。そう考えると、どうにも現実感のない状況に立たされて居ると思った。真季は落ち着かない様子で彼の顔を見上げた。
 そこにあるのは、優しげでありながら、どこか気取った笑みだった。

(上司に尻を叩いて欲しいだなんて頼んでおきながら、何を気取っているんだか……)

 呆れるような心境と共に、緊張感が抜けていく。

(別に身構えなくたって良いわよね。どうせ相手はアゴナガーなんだから)

 真季の心の内を知ってか知らずか、嬉々とした様子で本井はソファに上がった。お邪魔しますと妙な断りを入れつつ、うつ伏せで真季の膝に腰を乗せる。

「ああ……胸が高鳴ります……!」

 そんなことを口走る本井の背を見つめながら、真季は口を開いた。

「叩けば良いのよね、お尻」

「ええ……。まあ、叩くんでも、抓るんでも、真季さんの心のままにやっちゃってください。俺はそれを受け止め、悦びに浸るだけですから」

 被虐嗜好を躊躇い無く口にする本井に対して、気味が悪いとは思わなかった。利害が一致していることは認めざるを得ない。
 真季は静かに息を吐いて、尻に手をあてがった。

「じゃあ、いくわよ」

 そう告げて、右腕を大きく上げる。
 真季は黒々とした本井の後頭部をちらりと見てから、一気に手を振り下ろした。
 パシンッ。乾いた音が響く。衝撃は本井の尻だけでなく、真季の手の平にも走っていた。

「ううっ……」

 本井は呻き声を漏らしながら、もぞもぞと小さく身悶えている。
 ジンジンとした痺れるような痛みを右手に覚えつつ、真季は更に彼の尻を打った。今度は二度続けてだった。
 乾いた音に連なる本井の呻き声。
 真季の心臓が早鐘を打つ。体温が上昇して、艶やかな口元から火照った息が上がった。
 しなやかな指で本井の尻たぶを弄りつつ、真季が問う。

「どう? 理想と現実は違っていたかしら?」

「い、いえ……も、もっとお願いします……」

 苦しげでありながら、愉悦の滲み出た声音だった。
 憧れの女上司の膝に乗って、尻を打たれている。本井はその状況に酔い痴れていた。尻に走る痛みは倒錯的な快感となり、下着の中でペニスを膨らませる。
 真季は太ももに硬いものが触れるのを認めつつ、数度、尻を引っ叩いた。

「はあ……ああ……ふふふっ……」

 息を荒げて、淫靡に微笑む。
 興奮しているのは、本井だけではなかった。
 当然ながら真季よりも本井の方が体躯に恵まれている。力比べなどするまでもない。にも関わらず、彼は今、無抵抗で暴力を受け入れ、身悶えている。
 非力なはずの女に良い様に虐げられて、男根を膨らませているのだ。
 見下ろす情けない姿に、真季は劣情を抱かずにはいられなかった。
 言葉は自然と口をついて出た。

「お尻を叩かれて勃起するなんて変態ね!」

 そう罵る間も、その手は尻たぶ数発打っていた。

「あうっ、うううっ、へ、変態です……!」

 あっさりと本井は言った。
 それから、もぞもぞと腰を揺らしている。
 真季の太ももに怒張を擦り付けているようだった。

「こら、誰がそんな事をして良いと言ったのかしら」

 軽めの張り手を尻に受け、本井は動きを止めた。
 震える声が、謝罪を口にする。

「すっ、すみません……興奮し過ぎて……つい……」

 そう言ってから、彼は甘えるような声音で真季の名を呼んだ。
 彼女の薄い唇が小さく歪む。
 本井の反応は理想的だった。中途半端な恥じらいを残したものであれば、真季もここまで没入することはなかっただろう。
 彼女は高鳴る鼓動に従って、ほっそりとした白い指を本井のズボンに引っ掛けた。

「ま、真季さん……!?」

 予期していなかったのか。あるいは、真季を優位に立たせる為の演技か。いずれにせよ、本井は驚いた声を上げていた。

「黙ってじっとしてなさい。勝手に動くんじゃないわよ」

 真季の口から放たれたのは、冷たい声音であったがその顔には愉悦が滲んでいる。
 ズボンをずり下げ、そのまま強引に脱がせる。
 本井は真季の意向に従って腰を浮かせていた。
 ならばと真季は残る布地にも指を掛ける。

「ふふ……恥ずかしい格好にして、それからもっと叩いてあげるわ。覚悟しなさい……」

 そう告げて、下着を剥ぎ取った。
 下半身を完全に露出させられた本井は、小刻みに荒い息を吐いている。

(真季さんに見られてる……ケ、ケツも、ちんぽも……! 真季さんに……!)

「まるで発情した犬みたいな息遣いね。恥ずかしくないのかしら?」

「は、恥ずかしいけど……でも、とても興奮します……」

 白魚のような指の先が、本井の尻たぶを優しく撫でる。
 真季は一つ舌なめずりをしてから言う。

「いつまでそうやって悦んでいられるのか、見物ね」

 言い切るや否や、一気に張り手を振り下ろす。
 パチィンッ、と着衣の時以上に小気味の良い乾いた音が響いた。

「あうううっ……!」

 流石の本井も、愉悦以上に苦痛の滲む声を上げた。
 その身がピクピクと小刻みに震える。

「どうしたのかしら?」

 嗜虐に酔い痴れ火照った顔とは正反対の、冷静な声音で訊ねながら二度、三度と続けて尻を打つ。

「あうっ、うっ、うくっ、ううう……!」

 尻に走る痛み。本井はそれを受け止める度に、苦悶の呻きを漏らし、痙攣する身体を反り返らせた。
 その姿を見下ろして真季は口角を吊り上げていた。
 本井に部下以上の感情――恋慕の類などは抱いたことはない。それでも、彼は異性だ。男性だ。それが今、上着はそのままに下半身だけを露出した見っとも無い格好で尻を突き出し、そこを打たれて身悶えている。
 胸に秘めていた願望が満たされる瞬間が、こうも気持ち良いとは想像していなかった。
 頭がクラクラするような愉悦の中で、真季は腕を振り下ろしながら言う。

「貴方が望んだことでしょう? 違う?」

 すでに赤く腫れつつある尻たぶ。そこに加えられる新たな衝撃。傍目に見れば悲鳴の上がりそうな状況だが、本井はもう、痛みを感じていなかった。
 真季に尻を叩かれる度に感情が高ぶっていく。それにより分泌されたアドレナリンが、痛覚を麻痺させていた。

「ち……違いません……」

 震える声で本井が答えると、真季は情欲と愉悦を剥き出しにした、どこか危うげな美しい笑みで声を上げた。
「だったら」と、一発。「お礼の一つでも」と、一発。「言ってみなさいよ」と、最後に全力の一発。
 計三発。これまで以上に力を込めたビンタで、真季は息を切らし、薄っすらと汗を滲ませていた。
 本井はソファの肘置きに顔を埋めて、くぐもった声を上げた。

「あ、ああぁ、あああ、ありがとうございます……!」

 それを受けて、真季は背筋をゾクゾクと震わせた。身体の芯が熱せられていく。淫靡に蕩けていく思考の中で彼女は思う。
 このまま叩き続けるか、あるいは本井を全裸に剥いたり、姿勢を変えさせたりすべきか。
 どこへ向かうにしても、淫らな期待に胸が高鳴っていく。湧き出る嗜虐的な情欲に飲み込まれていった彼女を現実に引き戻したのは、本井の声だった。

「あの、真季さん、すみません……」

 弱々しくもはっきりとした、理性を残した調子だった。

「……何よ」

「いえ……あの……スカート、汚してしまったかも知れません。一度起きます」

 そう告げて、むくりと上体を起こし、そのままソファを降りた。

「わっ……」

 真季は思わず驚きの声を漏らした。
 立ち上がった本井のペニスを見ての反応だった。

「お尻叩かれてただけなのに、そんな風になるの……?」

 腹に付かんばかりに勃起した肉棒は、赤黒い亀頭部を粘液で濡れ光らせていた。
 男根に対する真季の感想よりも、本井は彼女の服を気にしていた。

「ああ……やっぱり……」

 真季のスカートに、我慢汁が付着してしまっていた。
 本井は「何か拭くものを」と、洗面所へ向かうが、その足はすぐに止められた。

「待ちなさい」

「ま、真季さん、スカートに……」

「いいから。そこに座りなさい」

 そう言って、つま先でソファの正面を指す。
 一瞬戸惑いを見せた本井だったが、すぐに彼女の命に従った。

(なんだかスイッチが入ってしまったと言う雰囲気だな……。良いでしょう。今宵、俺は貴女の奴隷です……!)

 などと、気取った台詞を思い浮かべる本井だが、そんな余裕はすぐに無くなった。
 陰部を丸出しにして、真季の足元に正座する。
 恥辱に苦しむはずの状況に、倒錯的な悦びが湧く。
 ペニスに甘い痺れを走らせる本井に向けて、真季が脚を伸ばす。

「ねえ、本井君」

「は、はい」

「これ」

 と言って、ペニスをつま先で小突く。
 小さく揺れた怒張は、歯に染みるような甘い疼きに苛まれる。

「どうしようかしら?」

「ど、どうしよう……とは……?」

 おずおずと訊ねる本井は、ある期待に胸を膨らませていた。
 射精させてもらえるかも知れない。


邂逅、それから#後編


PageTop

邂逅、それから#前編

 夏の気配がほんのりと感じられる夜のことだった。
 堀部真季(ほりべ まき)は、自宅からやや離れた所に位置するレンタルショップの一角に立っていた。
 そわそわと落ち着かない様子で、オレンジがかった茶色に染めた髪の先をしきりに触っている。
 右手にはレンタルDVDのパッケージ。
 その裏面を見つめる瞳は、きつく見えない程度に鋭い。
 頬はほんのりと紅潮していた。
 彼女が手にしているのは、アダルトビデオのパッケージである。
 それも女性が上位――と言うよりも、男は虐げられるだけの存在として撮影されたものだ。
 スパンキングによるものであろう、真っ赤になった痛々しい尻が映っている。それを見つめる瞳は熱に浮かされたように潤んでいた。

(借りていこうかしら……。でも、記録に残るはずよね、私がこういう物を借りて行ったって。……いや、でも、せっかく無人のレジがあるお店まで来たのだから、やっぱり……)

 この類の映像作品を借りるのは、初めてのことだった。
 レンタルショップの仕組みをあれこれ調べた挙句に辿り着いたのが、近頃無人のレジを導入し始めた大手のチェーン店であった。

(……そうよ。大丈夫、大丈夫よ。別に悪いことをしている訳じゃないんだから……)

 今手にしているSMもののアダルトビデオを借りて帰る。真季が、その世にもくだらない決意を固めたのと、名を呼ぶ声音が上がったのは同時だった。

「真季さん!」

 びくりっ。大きく肩を跳ね上げ、見る間に青くなっていった顔で振り向く。

(げっ。アゴナガー……!)

 真季が内心で毒づく相手は、彼女の部下である幾つか年下の男だった。
 本井正二(もとい しょうじ)。決して不細工ではないが、長い顎が目立つ為に、真季は密かに彼を「アゴナガー」と呼んでいた。もちろん、面と向かってそう呼んだ記憶はない。
 にも関わらず、本井は言う。

「ふふ、真季さん、今……げっ、アゴナガー、と、そう思ったでしょう?」

 心の声を言い当てられた真季は、思わず口に手をやっていた。
 声に出していたのだろうか。
 彼女の反応を見て、本井は満足げな笑みを浮かべた。

「あれは連休明けのことでしたね。溜まった仕事の山、山、山。それを片付けるべく行われた、残業に次ぐ残業。真季さんもお疲れだったのでしょう」

「な、なによ、急に……」

 突然長々と喋り出した本井に、真季は怪訝な顔を向けた。
 何も容姿だけで蔑称を与えているのではない。この軽薄な調子で行われる無駄口も含めての「アゴナガー」である。
 とは言え、普段のそれはもう少しまとまりがある。いきなり数週間前の話を掘り返すようなことはなかった。
 まあまあ。とジャスチェーを送り、本井は言葉を続けた。

「書類の束をやっつけながら、真季さんは言ったのですよ。”それ終わったら、こっちをお願い、アゴナガー”……とね」

(しまった……)

 記憶には無いが、有り得ない話ではなかった。
 毎年のことではあるが、連休明けの仕事量は半端ではない。
 部下へ回す仕事の割り振りと、自身でこなす仕事の優先順位を思考しながら、心の中で何度も本井をアゴナガーと呼んでいたに違いない。
 刻々と回り続ける時計の針に急き立てられる中で、普段は無意識にやっている呼称の切り替えが上手くいかなかったのだろう。

「……それは、悪かったわね」

 そう言いながら真季はDVDのケースをさっと後ろ手に隠す。同時に、半歩下がってSMコーナーから離れた。

「いいえ、何も謝らなくても。真季さんにニックネームを付けていただけるなんて、この顎が珍しく役に立ったものだと……と、それはまあ良いでしょう。それよりも、やはりその手の物がお好きでしたか」

 ドキッと心臓を跳ね上がらせつつも、真季は嘯いた。

「その手のって……何よ……」

 平静を装ったつもりが、どこかぎこちない物言いだった。

「真季さんが今持っているDVDですよ」

 事も無げに言う本井に対して、真季はすぐに応じることが出来なかった。
 出来れば、開き直るような真似はせずに切り抜けたい。
 焦りに苛まれる思考を落ち着かせるように静かに深く呼吸をしつつ、状況を再確認する。
 ――一体どこから見られていたのか。レンタルするかしないか悩んでいる時間はそれなりに長かった。
 ひょっとすると、しっかり真季の様子を覗ってから声を掛けて来たのかも知れない。

(あれ……?)

 本井とのやり取りを脳裏で反芻する内、一つの違和感に囚われる。
 ――その手の物が好きでしたか。そう告げる前に、彼はなんと言ったか。

(やはり……って、言ったわよね……?)

 自身の嗜好を周囲に話した覚えはないし、社内の行動から見透かされるようなこともないはずだ。困惑した表情を浮かべる真季に、本井は微かに浮かべていた笑みを深めた。

「どうして俺が貴女の秘密を知っているのか、気になりますよね? まあ、正確に言えば、そうだったら良いなと言う願望めいた予想だった訳ですが」

 回りくどい物言いに苛立ちを覚えつつも、真季は問う。一体どこで、と。

「ふふ、迂闊ですな。そうあっさり認めてしまうなんて。誘導尋問だったらどうする――」

「そう言う無駄な口上はいらないわよ」

 台詞を遮られた本井は、つまらなさそうに唇を尖らせてから、真っ直ぐに真季を見据えて口を開いた。

「あれは俺の一つ下の新人の歓迎会でしたね。覚えてます?」

「……別に変わったことはなかったはずよ」

 酒乱の気があるだとか、酒癖が悪いと言ったこともない。
 それでも記憶はおぼろげだった。つまり、印象に残る場もない程、可もなく不可もなく過ごしたに違いない。
 真季は自身の嗜好が見抜かれる場面などあるはずがないと思っていた。

「そうですねえ、変わったことはありませんでしたよ。恐らく、俺ぐらいでしょうね、それに気付いたのは……。っと、真季さんと喋っていると楽しくてつい言葉が多くなってしまう。単刀直入に言いましょう。あの時の居酒屋、テレビが付いていたでしょう?」

「……ええ。それが?」

「そこで映っていた番組ですよ。まあ、なんて事のないバラエティですね。お笑い芸人がしょうもないゲームで得点を競っているわけですよ」

「……それで?」

 露骨に苛立ちを見せる真季に、笑みを苦くさせつつ、本井は言う。

「酒の席ではお偉いさん方の話が堂々巡りになってきた頃ですよ。番組の終盤、その手の企画にありがちな罰ゲームでね、その時売り出し中だったグラビアアイドルが芸人の尻を叩く訳ですよ」

「あ……」

 確かに、そんな映像を見た記憶があった。

「グラス片手にそれを見つめる真季さんがね……潤んだ瞳に羨望を映しておいでで、色気に満ちていたんですよ。それはもう、淫靡かつ美しいお姿で……。ま、そこからですね。真季さんがその手の趣味をお持ちなのではないかと思い始めたのは」

 油断していた。まさかそんな所を見られてるとは思わなかった――真季はこめかみを軽く押さえつつ、苦い沈黙に陥るが、復帰は早かった。

「……本井君の観察力には敬意を表するわ。だけどね、人の趣味に干渉しないでくれるかしら?」

 もはや言い逃れは不可能と判断した真季は、さっさとこの場を脱する方向へと言葉の舵を切った。
 上司として叱る時のように、圧を込めた物言いで押し退けてしまえと真季は更に言う。

「貴方にも人に言い難いことの一つや二つあるでしょう? それを嬉々として暴くなんて、性格が悪いとしか言えないわよ」

 キッと本井を睨んだ後、何気ない素振りで手にしていた物を陳列棚に戻した。
 後はこのまま彼の脇を抜けて、店を出てしまえば良い。
 真季が脱出経路を思い描いたタイミングで、店内に響いていたBGMが止まった。
 次の曲へと移るまでの、短い静寂の中で、本井が言う。

「すみません。ですが、本題はここからですよ。どうせなら、作り物なんかで満足せずに……俺で試してみませんか?」

 その声音と眼差しは、真剣そのものだった。
 真季は何とも答えることが出来ずに、本井を見つめるしかなかった。
 BGMが再び流れ出す。

「その様子からして、日頃から実践している訳ではないでしょう。胸に秘めた願望を俺にぶつけてみませんかと……いえ、ぜひぶつけていただきたい。
俺はね、先に話した居酒屋での一件から、被虐嗜好に嵌っていったんですよ」

 真季は返す言葉が思いつかなかった。


邂逅、それから#中編


PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。