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ぷるんぷるるん

女の子に気持ち良くいじめられるM男向け官能小説公開中。

33.珍妙なやりとり

 樫田の唐突な行動に、知奈は呆気に取られたような顔付きをした。
 そんな反応に構わず、樫田は言葉を続けた。
 忘れていた記憶を取り戻したことに酷く興奮している為に支離滅裂な部分も多々あったが、昨夜の出来事から今しがた起こった変化までを告げた。
 単なる夢だったのではないとの確信を持って、樫田は声を上げた。

「俺達はやっぱり過去に会ったことがあるんだ! それに、知奈ちゃんが忘れている知奈ちゃん自身のことも、思い出したよ!」

 知奈はぽかんとしたままで、樫田の話を聞いていたが、彼の声が途絶えて教室に静寂が戻るとキッと眉をひそめた。
 そんな知奈の反応を受けて、樫田は血の気が引いていくのを認めた。興奮が醒めると、自身の言動を悔いずにはいられなかった。
 酷く怒られるであろうことを予期して身を強張らせる。罵声に留まらず、平手の一つや二つも食らうのを覚悟するが、どちらも一向に飛んでくる気配はなかった。
 黙ったままで樫田を睨み付けていた知奈の瞼が、突然ストンと落ちた。短くも、単なるまばたきにしては長い間があった。
 目を見開いた知奈が、今度は驚いたような表情を浮かべる。そうかと思えばすぐに破顔一笑し、樫田がそうしたのと同じように勢い良く立ち上がった。
 満面の笑顔を浮かべる眼前の美少女が、いつもの知奈でないことは明らかだ。
 すっかり冷静になり、教室中の視線と注目を集めている今の状況に羞恥心を抱くばかりの樫田は冷や汗を流しながら訊ねた。

「知奈ちゃん、だよね?」

「うん!」という元気な返事をした後、知奈は樫田に抱き付いた。
 その際にふんわりと舞った香りは、天真爛漫といっ表情や声音とは裏腹のやけに色っぽいものだった。
 それにドキリとすると同時に、ますます奇異な状況へと陥ってしまったことに焦った。
 そんな樫田に構わず、知奈は嬉しそうに頬擦りをしながら声を上げた。

「思い出してくれてありがとう! ……私も全部、思い出したよ」

 震える彼女の声音が、樫田に再会を果たしたことを強く実感させた。 
 先ほどまで彼を支配していた焦燥感や羞恥心は吹き飛んでしまった。
 知奈の身を強く抱き締めて、彼女の名を呼んだ。

「知奈ちゃん!」

 先から変わらず頬擦りを繰り返している知奈もまた「渉!」と名を呼んだ。
 二人のやりとりは周囲から見れば全くもって意味不明だったが、苦難の末に大団円を迎えた恋愛劇めいており、みんな黙って見守るほかなかった。中には拍手を打とうと構えている者すらいた。
 そうした空気をぶち壊したのは、第三者ではなく、知奈自身だった。人格の入れ替わりが起こったのだ、と、後になれば理解出来ただろうが、樫田はその瞬間、何が起こったのか分からなかった。
 抱擁を解いた彼女から、頬への平手打ちを食らわせられた衝撃で頭が真っ白になっていた。
 追い打ちを掛けるように、知奈がヒステリックな声を上げた。

「一体これは何なの!?」

「あ、え、ああ、えっと……」

 相変わらず級友は黙ったままだが、沈黙の意味合いが先とは違っていた。張り詰めた空気が教室を支配している。
 言葉を詰まらせる樫田もまた、別種の焦燥感に苛まれていた。

「また……アレなの?」

 別人格が現れたのか、とはっきり問わない辺り、樫田に比べればずっと冷静なのだろう。
 知奈への返事として、樫田は何度か首を縦に振った。それが精一杯だった。
 二人も沈黙してしまう。
 原因が分かったところで、好奇の視線を集めるばかりの、この状況を抜け出す妙案が浮かぶ訳ではなかった。
 さすがの知奈も焦りを隠しきれないようだ。
 彼女の困惑した表情が、周囲にも動揺を走らせた。
 ひそひそとした話し声があちこちで上がり、次第に教室が騒がしくなっていく。
 こうなっては、この場を収めることが出来る人間は一人しかいない。
 貝塚が大きく手を打ち、注目を集めた後、授業の再開を告げた。
 知奈は事態が収拾したことに安堵しつつも、果たして貝塚の授業中に別人格が現れたことは偶然なのだろうかと訝しんだ。
 事の発端となった樫田は、まだ凄まじい早さで脈を打っている胸に手を当て、呆然とするばかりだった。


つづく
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コメント


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これは続きが気になります。
更新楽しみにしてます!!

悠ちゃんの奴隷 | URL | 2018-02-15(Thu)20:15 [編集]