ただ一方的に射精をするだけ、と分かっていても、俺は緊張していた。
まるで初めてのセックスを目前に控えた童貞の心地だ。
まだ日の高い内に、暦からそっと耳打ちをされた。
「今からそんなんじゃ、夜までもたないよ」
暦の言う通りであるが、そう簡単に落ち着けるものではない。
俺はそわそわとする心を落ち着ける為に、普段はサボりがちである部屋の掃除やら、筋トレなどに励みつつ、夜を待った。
夕食も済み、すっかり日が暮れた頃、俺は自室で秘かに準備を始めた。
素っ裸になり、全身に虫除けを塗りたくる。
我ながら性欲でどうにかなっているのではないかと疑ってしまう。俺は薬液で全身を濡れ光らせている自分の姿に官能めいたものを認めていた。
無毛の股間で陰茎がいきり立ってしまう。
陰毛は今朝の内に、部屋で短く切り揃えてから、風呂場で慎重に剃り上げた。
暦の命令だった。
妹に命じられてパイパンになったのだと考えると、被虐的な心持がして、股間に手が伸びてしまいそうになる。
後少しなのだから、と自分に言い聞かせ、手淫を我慢する。
準備が済んだ後は手持ち無沙汰で待機していた。時間にすれば十分と経っていなかったが、酷く長く感じられた。
部屋のドアを何度か叩いてから、暦が入って来る。
「裸で待ってたの?」
そう言う彼女の手には、紙おむつが握られている。
暦は、今の季節にしては少しばかり暑そうな格好をしていた。
トップスは袖こそないものの、厚めの生地で、肩回りは大ぶりのフリルによって飾り立てられている。ボトムスも、丈こそ短いが厚手のフレアスカートである。
総じて、夏場の服装にしては肌の露出が少なく、色気に繋がる隙が感じられないものの、ふんわりひらひらとした女性的な雰囲気には、嗜虐的なところがなく、実態との間に大きなギャップを生じさせており、露骨では無い艶やが感じられた。
元よりムラムラしていた俺の目には、とんでもなくいやらしい格好の様にさえ思えた。
「ほら、これ穿いて」
渡された紙おむつを穿き、その上に普段着を羽織る。
思っていたよりは動きやすいものの、やはり違和感はある。
とは言え、暦の指示に背く、というのは、もはや選択肢にも上らず、不満を口にする気にさえならなかった。
俺達は連れ立って家を出た。その際に、暦が玄関から居間の両親に向かって「お兄ちゃんとコンビニ行って来るね」と元気に声を上げたのが印象的だった。
自転車の後ろに暦を乗せて、先日も利用した公園へ向かう。
こうして二人乗りをしていると、まるでカップルにでもなったようだ、などと恥ずかしい事を考えながら、人や車の多い通りを避けて、静かな夜道を駆けていった。
公園にはやはり、俺達以外に人の姿は無かった。
いよいよ暦の前で射精が出来る。そう思うと胸が高鳴って仕方なかった。
公園の出入り口を見通すことが出来、尚且つ外灯から遠過ぎず近過ぎず、いざとなれば公衆トイレの中や建物の陰に隠れられる場所に陣取った。
暦と向かい合って立つと、彼女の方が少し背が高くなっている事に気が付く。足元を見やると、コスプレに使っていた厚底のサンダルを履いていた。
軽く見下ろされる事に興奮してしまう。もちろん、それがなくとも、俺はすっかり出来上がってしまっているのだが。
暦もそれを分かっているのか、俺を見る顔付きは、既に平生のそれではなくなっていた。
「……ふふっ。ほら、おねだりは?」
そう促され、俺は上目遣いに暦の顔を見やりながら口を開く。
「紙おむつ一枚の情けない格好で射精する所、暦様に見てもらいたいです。お願いします♡」
暦はくすりと笑い、ベンチに腰掛けた。
ゆっくりと脚を組む。その仕草にドキドキしていると、彼女は色っぽい笑みを浮かべて良いよと言った。
脱いだ服を暦に手渡し、腰に紙おむつ、足にはサンダルという格好で、改めて彼女の正面に立つ。
寒くは無かったが、やはり酷く心許ない気持ちにさせられた。
それでも、暦に情けない格好を見られているのだと思うと、陰茎は勃起してしまう。
自然と息が上がり、思考は劣情に支配されていく。
紙おむつ一枚の姿で射精させてもらえる、としか聞かされておらず、ここからどうするべきなのかを知らない俺は、おずおずと口を開いた。
「……暦様♡ お願いします♡ 射精させてください♡」
「ねえ時治、どうやって射精させてもらえると思う?」
「分かりません♡ けど……暦様が命令してくれるなら、何でも嬉しいです♡」
「ふふっ♡ おいで♡」
立ち上がった暦が両腕を広げて言った。
訳が分からないまま、俺はふらふらと近付いていく。
良い匂いがする、と認めたと同時に、暦に抱き付かれる。柔らかい。
「ほら♡ 時治も♡ ぎゅーってして良いんだよ♡」
甘い声に囁かれ、俺は暦の背に腕を回してその身を強く抱き締めた。
柔らかい。良い匂いがする。
頭の中がトロトロと蕩けていく。俺は息を荒げ、本能のまま、殆ど無意識に腰を前後させてしまう。
耳のすぐ近くで、暦が声を上げる。
「ふふっ♡ そうそう♡ それで良いの♡ 今日は私に抱き付いて腰をヘコヘコしながら、おむつの中におもらしするみたいに射精しちゃって良いんだよ♡ ねえ、とっても惨めな射精でしょ♡」
「ううっ♡ はい♡ 惨めな射精です♡ う、う♡」
俺は暦の首筋に顔を寄せながら、腰や太ももに向かって腰を振る。
陰茎は紙おむつの中に収まったままであり、直接擦り付けている訳ではない為に、俺が今、陰茎で得ている快感は、床オナなどのそれに近いものがあった。
それでいながら、股間以外の部分では、抱き付いて密着している感覚をしっかりと味わっている。
おむつ着用という状況も相俟って、男として異性に甘えているというよりも、子ども扱いされて甘やかされている様にも思えた。
まるで精神的な去勢である。暦に性を管理・抑圧され、支配される。その興奮が俺の腰を激しく動かした。
「ほら♡ ヘコヘコ♡ ヘコヘコ♡ 気持ち良いね♡ もっと私の臭いを嗅いでも良いんだよ♡ だけど、何をするのもまずはおねだりからね♡ ちゃんと自分が惨めな方法で射精するんだって事と、情けない方法で気持ち良くなってるって事、忘れちゃ駄目なんだから♡」
「は、はい♡ 暦様♡ あ、あうう♡ あの♡ お願いします♡ 腋の匂いが嗅ぎたいです♡ 腋の匂いを嗅ぎながら、情けなく腰をヘコヘコ、ガクガクしたいです♡ お願いします、暦様♡」
「良いよ♡ ほら、どうぞ♡」
暦が腕を上げて腋の下を露にすると同時に、俺はそこへ顔を突っ込んだ。
汗の臭いを感じながら、彼女の太ももに跨る様にして腰を振る。
「ふわあぁ♡ 暦様ぁ♡ あっ、ああ♡ 好き♡ 良い匂いがします♡ もっといっぱいヘコヘコさせてください♡ お願いします♡」
「好きなだけヘコヘコして良いよ♡ どうせ汚れるのはおむつだけなんだから♡ だっさい射精しちゃおうね♡」
「はい♡ はいぃ♡ ださい射精します♡ 格好悪くイッちゃいたいです♡ 暦様に馬鹿にされたいです♡ ああ♡ あっ♡ 頭がクラクラします♡」
「はいはい♡ 好きにして良いよ♡ 今日の為にいっぱい我慢したんだもんね♡ 妹に甘やかされながら惨めな射精する気持ち良さで、頭おかしくなっちゃおうね♡ ほら、もっと色んな所に擦り付けてヘコヘコして良いよ♡」
そう告げられて、俺が目を付けたのは股間だった。
暦のそこを刺激してどうこうしようと言うのではなく、本能的な興味に駆られての選択だった。
俺は脚を大きく開いて軽く腰を落とし、下から突き上げる様にして亀頭を暦の股間に押し付けた。
厚底サンダル分の身長差や、俺が腰を落としている都合上、顔の前には胸の膨らみが来ていた。
俺は力強く暦に抱き付き、胸の谷間に顔を埋めた。柔らかくて良い匂いがして、温かかった。
本能のままに腰を振る。紙おむつの中で潰されている陰茎がジクジクと疼く。我慢汁が垂れ流しになっているのが分かる。
「ふふっ♡ やっぱりそこが気になるんだ? そうだよね♡ おちんちんは、おまんこを気持ち良くする為に生えてるんだから♡ でも♡ 時治の雑魚マゾちんぽはセックスには使えないんだよね♡ だ・か・ら♡ こうやってぇ♡ 子宮どころかおまんこの中にさえ、絶対に精子が届かない様な方法で射精しようとしてるんでしょ♡」
「あ、あ゛あ゛♡ 暦様の言う通りです♡ 俺の貧弱ちんちんは、セックスには使えない雑魚ちんぽです♡ 暦様に虐められる専用のマゾちんぽです♡ んっ♡ はあぁっ♡ ああ、気持ち良い♡ 気持ち良過ぎて本当に駄目になる♡」
「良いよ♡ ……っていうか、もう手遅れだろ」
不意に放たれた、暦の高圧的で冷たい声音に背筋がブルルッと震える。
「妹相手にこんなに盛って、襲い掛かるならまだしも、おむつ穿いて馬鹿みてーに腰ヘコヘコしながらアヘアへしてる時点で終わってるって。何か反論あるなら言ってみ? クソ雑魚マゾ野郎の時治くん」
俺は暦に抱き付くというよりも、しがみ付いた状態で、全身を小刻みに震わせていた。情けない事に、俺は暦の態度に恐怖を感じていた。
ずっと暦も楽しんでいると思っていたのが、否定された気分だったのだ。
そんな心持でありながらも、暦から漂う匂いは堪らなく性的で心地良く、身体の柔らかさは放し難く、官能的に感じられる。動きを止めていたはずの腰が小さく前後し始める。
「だっさ……。ここまでコケにされてもまだ腰振るんだ? 本当、終わってるね。このまま射精までしたら、マジで二度と普通の恋愛なんて出来なくなると思うけど良いの? まあ良いよね。既に男として終わってるんだから。ほら、いつまでも悔しがってるふりしてないで、腰振ってマゾ汁出せば?」
「うっ……うう……。暦様……♡」
「てか、捨ててあげよっか? マゾだからそれさえ嬉しいでしょ? 射精した瞬間から口聞かないってのはどう? 最後に金玉ぐらい蹴り上げてあげよっか? ね? どう?」
「あ、う、う、嫌です。お願いします♡ 暦様♡ 暦様に捨てられたら生きていけません♡ これからも俺の事を虐めてください♡」
「……じゃあ何でも言いなりになるって誓え」
「はいっ♡♡ 誓います♡♡ 暦様の命令には何だって逆らいません♡」
「私が射精しろって言ったら、どんな時でも射精出来る?」
「出来ます♡ 絶対に射精します♡ 暦様の命令が無ければ、もう二度と射精しないって誓えます♡」
「もしも、私のおまんこに生でおちんちん入れてる最中に命令されても?」
「……はいっ♡♡ もちろんですっ♡♡ 誓います♡♡」
「……あーあ♡ 良いの? そんな事まで誓っちゃって」
「良いです♡ だから、捨てるなんて言わないでください♡」
「はいはい♡ 分かったよ♡ じゃあ、優しくしてあげるから、無様腰ヘコ紙おむつ射精の続き、しようね♡」
「はーい♡」
微かに残る冷静な部分が、俺の言動を咎め、蔑んでいるが、もはやどうにもならなかった。
俺には、暦から与えられる被虐的な快感を失う事など考えられなかった。
失わない為なら、どんな事でもやるつもりだ。
暦がどんな考えを持って、俺を脅かしたのかは分からないが、媚びへつらう事で許されるのなら、幾らでも媚びへつらう。
「今度はしゃがんで、脚に抱き付きながら腰振ってごらん♡」
「はいっ♡」
言われるがままにしゃがみ、太ももの間に顔を埋め、脛に押し付けた腰を上下に振り続ける。
「後ろに回って、お尻に顔を埋めて♡」
「はい♡」
スカートの中に頭を突っ込む。その小さな空間を満たしていた、豊潤な雌の芳香が鼻孔を蕩けさせる。俺は理性どころか知性すら失った様な声で妹の名を口にしながら、顔を尻の谷間に押し付けた。
身体全体を上下に動かし、ふくらはぎへ陰茎を擦り付ける。むにむにと柔らかな尻たぶの感触を顔面に受けながら、俺は多幸感に包み込まれていく。ヘコヘコ、むにむに。
頭上からは暦の声。「馬鹿♡」「雑魚♡」「変態♡」「マゾ♡」「きもっ♡」「だっさ♡」「ばーか♡」などと並べ立てられる罵詈雑言が、俺の脳を、精神を、ぐちゃぐちゃに犯していった。
「あっ♡ ああん♡ あん♡ 暦様♡ もうマゾちんぽが幸せになり過ぎて♡ 精液のおもらししちゃいそうですう♡」
「ふふ♡ ちゃんと報告出来て偉いね♡ ほら、立って♡ 立ちバックでエッチしてるみたいな格好で腰ヘコさせてあげる♡」
「はい♡ ありがとうございます♡ 暦様♡」
俺は立ち上がり、ぎゅっと強く暦の背を抱き締め、うなじに鼻を押し付けながら、腰を振る。紙おむつ越しの陰茎を尻たぶに擦り付ける。
「あ゛あ゛っ♡ ヘコヘコ♡ 気持ち良っ♡ すぐ♡ すぐ♡ 出ちゃいそうです♡」
「ちゃんと気持ち良くおもらし出来る様に、もっと頭の中トロトロにして♡ もう二度と私の命令無しでは射精出来なくて嬉しい♡ 命令されれば足でもおまんこでもペロペロしちゃう、変態マゾ奴隷にされて嬉しい♡ ちんちんが妹に虐められる専用になっちゃって幸せ♡ って♡ ちゃんと私に支配される悦びを噛み締めて♡ 自分の為じゃなくて、私の為に射精するって言いながら射精しろ♡ この馬鹿マゾッ♡」
「あ、あ、あ♡ し、します♡ 暦様の為に♡ あっ♡ ああん♡ 暦様、暦様の為に射精します♡ あああ゛あぁ♡ あっ♡ イッ……♡ 暦様の為にぃ♡ マゾイキします♡ ああぁ♡ 出るっ♡ 暦様の為のザーメン♡ あああぁぁあぁっ♡♡」
爆ぜる様な快感があり、俺は無意識に爪先立ちになっていた。会陰部が引き攣るように収縮し、睾丸は跳ねているかの様にひくひく痙攣し、尿道内を熱い物が駆け上り、鈴口が押し広げられる気持ち良さがあった。
びゅるる、びゅる、びゅる、何度かに分かれて精液が放出される。その量が尋常でない事は、目で見ずとも分かった。
俺は一生このまま暦の背中にしがみ付いていたいとさえ思っていたが、足腰が立たず、よろよろとベンチに腰を下ろした。
すぐに暦が近付いて来て、おむつを外した。
精液の独特な香りがむわあ、と立ち昇った。
「やば……♡ 出し過ぎ♡ そんなに気持ち良かった?」
俺はハアハアと息をしながら頷いて答えた。
これから俺達はどうなっていくのだろうか。一抹の不安はあったが、心地良い疲労感の中で見る暦の顔は、いつにも増して魅力的に感じられ、俺は、二人でならどこまで堕ちても構いやしないと思うのだった。
まるで初めてのセックスを目前に控えた童貞の心地だ。
まだ日の高い内に、暦からそっと耳打ちをされた。
「今からそんなんじゃ、夜までもたないよ」
暦の言う通りであるが、そう簡単に落ち着けるものではない。
俺はそわそわとする心を落ち着ける為に、普段はサボりがちである部屋の掃除やら、筋トレなどに励みつつ、夜を待った。
夕食も済み、すっかり日が暮れた頃、俺は自室で秘かに準備を始めた。
素っ裸になり、全身に虫除けを塗りたくる。
我ながら性欲でどうにかなっているのではないかと疑ってしまう。俺は薬液で全身を濡れ光らせている自分の姿に官能めいたものを認めていた。
無毛の股間で陰茎がいきり立ってしまう。
陰毛は今朝の内に、部屋で短く切り揃えてから、風呂場で慎重に剃り上げた。
暦の命令だった。
妹に命じられてパイパンになったのだと考えると、被虐的な心持がして、股間に手が伸びてしまいそうになる。
後少しなのだから、と自分に言い聞かせ、手淫を我慢する。
準備が済んだ後は手持ち無沙汰で待機していた。時間にすれば十分と経っていなかったが、酷く長く感じられた。
部屋のドアを何度か叩いてから、暦が入って来る。
「裸で待ってたの?」
そう言う彼女の手には、紙おむつが握られている。
暦は、今の季節にしては少しばかり暑そうな格好をしていた。
トップスは袖こそないものの、厚めの生地で、肩回りは大ぶりのフリルによって飾り立てられている。ボトムスも、丈こそ短いが厚手のフレアスカートである。
総じて、夏場の服装にしては肌の露出が少なく、色気に繋がる隙が感じられないものの、ふんわりひらひらとした女性的な雰囲気には、嗜虐的なところがなく、実態との間に大きなギャップを生じさせており、露骨では無い艶やが感じられた。
元よりムラムラしていた俺の目には、とんでもなくいやらしい格好の様にさえ思えた。
「ほら、これ穿いて」
渡された紙おむつを穿き、その上に普段着を羽織る。
思っていたよりは動きやすいものの、やはり違和感はある。
とは言え、暦の指示に背く、というのは、もはや選択肢にも上らず、不満を口にする気にさえならなかった。
俺達は連れ立って家を出た。その際に、暦が玄関から居間の両親に向かって「お兄ちゃんとコンビニ行って来るね」と元気に声を上げたのが印象的だった。
自転車の後ろに暦を乗せて、先日も利用した公園へ向かう。
こうして二人乗りをしていると、まるでカップルにでもなったようだ、などと恥ずかしい事を考えながら、人や車の多い通りを避けて、静かな夜道を駆けていった。
公園にはやはり、俺達以外に人の姿は無かった。
いよいよ暦の前で射精が出来る。そう思うと胸が高鳴って仕方なかった。
公園の出入り口を見通すことが出来、尚且つ外灯から遠過ぎず近過ぎず、いざとなれば公衆トイレの中や建物の陰に隠れられる場所に陣取った。
暦と向かい合って立つと、彼女の方が少し背が高くなっている事に気が付く。足元を見やると、コスプレに使っていた厚底のサンダルを履いていた。
軽く見下ろされる事に興奮してしまう。もちろん、それがなくとも、俺はすっかり出来上がってしまっているのだが。
暦もそれを分かっているのか、俺を見る顔付きは、既に平生のそれではなくなっていた。
「……ふふっ。ほら、おねだりは?」
そう促され、俺は上目遣いに暦の顔を見やりながら口を開く。
「紙おむつ一枚の情けない格好で射精する所、暦様に見てもらいたいです。お願いします♡」
暦はくすりと笑い、ベンチに腰掛けた。
ゆっくりと脚を組む。その仕草にドキドキしていると、彼女は色っぽい笑みを浮かべて良いよと言った。
脱いだ服を暦に手渡し、腰に紙おむつ、足にはサンダルという格好で、改めて彼女の正面に立つ。
寒くは無かったが、やはり酷く心許ない気持ちにさせられた。
それでも、暦に情けない格好を見られているのだと思うと、陰茎は勃起してしまう。
自然と息が上がり、思考は劣情に支配されていく。
紙おむつ一枚の姿で射精させてもらえる、としか聞かされておらず、ここからどうするべきなのかを知らない俺は、おずおずと口を開いた。
「……暦様♡ お願いします♡ 射精させてください♡」
「ねえ時治、どうやって射精させてもらえると思う?」
「分かりません♡ けど……暦様が命令してくれるなら、何でも嬉しいです♡」
「ふふっ♡ おいで♡」
立ち上がった暦が両腕を広げて言った。
訳が分からないまま、俺はふらふらと近付いていく。
良い匂いがする、と認めたと同時に、暦に抱き付かれる。柔らかい。
「ほら♡ 時治も♡ ぎゅーってして良いんだよ♡」
甘い声に囁かれ、俺は暦の背に腕を回してその身を強く抱き締めた。
柔らかい。良い匂いがする。
頭の中がトロトロと蕩けていく。俺は息を荒げ、本能のまま、殆ど無意識に腰を前後させてしまう。
耳のすぐ近くで、暦が声を上げる。
「ふふっ♡ そうそう♡ それで良いの♡ 今日は私に抱き付いて腰をヘコヘコしながら、おむつの中におもらしするみたいに射精しちゃって良いんだよ♡ ねえ、とっても惨めな射精でしょ♡」
「ううっ♡ はい♡ 惨めな射精です♡ う、う♡」
俺は暦の首筋に顔を寄せながら、腰や太ももに向かって腰を振る。
陰茎は紙おむつの中に収まったままであり、直接擦り付けている訳ではない為に、俺が今、陰茎で得ている快感は、床オナなどのそれに近いものがあった。
それでいながら、股間以外の部分では、抱き付いて密着している感覚をしっかりと味わっている。
おむつ着用という状況も相俟って、男として異性に甘えているというよりも、子ども扱いされて甘やかされている様にも思えた。
まるで精神的な去勢である。暦に性を管理・抑圧され、支配される。その興奮が俺の腰を激しく動かした。
「ほら♡ ヘコヘコ♡ ヘコヘコ♡ 気持ち良いね♡ もっと私の臭いを嗅いでも良いんだよ♡ だけど、何をするのもまずはおねだりからね♡ ちゃんと自分が惨めな方法で射精するんだって事と、情けない方法で気持ち良くなってるって事、忘れちゃ駄目なんだから♡」
「は、はい♡ 暦様♡ あ、あうう♡ あの♡ お願いします♡ 腋の匂いが嗅ぎたいです♡ 腋の匂いを嗅ぎながら、情けなく腰をヘコヘコ、ガクガクしたいです♡ お願いします、暦様♡」
「良いよ♡ ほら、どうぞ♡」
暦が腕を上げて腋の下を露にすると同時に、俺はそこへ顔を突っ込んだ。
汗の臭いを感じながら、彼女の太ももに跨る様にして腰を振る。
「ふわあぁ♡ 暦様ぁ♡ あっ、ああ♡ 好き♡ 良い匂いがします♡ もっといっぱいヘコヘコさせてください♡ お願いします♡」
「好きなだけヘコヘコして良いよ♡ どうせ汚れるのはおむつだけなんだから♡ だっさい射精しちゃおうね♡」
「はい♡ はいぃ♡ ださい射精します♡ 格好悪くイッちゃいたいです♡ 暦様に馬鹿にされたいです♡ ああ♡ あっ♡ 頭がクラクラします♡」
「はいはい♡ 好きにして良いよ♡ 今日の為にいっぱい我慢したんだもんね♡ 妹に甘やかされながら惨めな射精する気持ち良さで、頭おかしくなっちゃおうね♡ ほら、もっと色んな所に擦り付けてヘコヘコして良いよ♡」
そう告げられて、俺が目を付けたのは股間だった。
暦のそこを刺激してどうこうしようと言うのではなく、本能的な興味に駆られての選択だった。
俺は脚を大きく開いて軽く腰を落とし、下から突き上げる様にして亀頭を暦の股間に押し付けた。
厚底サンダル分の身長差や、俺が腰を落としている都合上、顔の前には胸の膨らみが来ていた。
俺は力強く暦に抱き付き、胸の谷間に顔を埋めた。柔らかくて良い匂いがして、温かかった。
本能のままに腰を振る。紙おむつの中で潰されている陰茎がジクジクと疼く。我慢汁が垂れ流しになっているのが分かる。
「ふふっ♡ やっぱりそこが気になるんだ? そうだよね♡ おちんちんは、おまんこを気持ち良くする為に生えてるんだから♡ でも♡ 時治の雑魚マゾちんぽはセックスには使えないんだよね♡ だ・か・ら♡ こうやってぇ♡ 子宮どころかおまんこの中にさえ、絶対に精子が届かない様な方法で射精しようとしてるんでしょ♡」
「あ、あ゛あ゛♡ 暦様の言う通りです♡ 俺の貧弱ちんちんは、セックスには使えない雑魚ちんぽです♡ 暦様に虐められる専用のマゾちんぽです♡ んっ♡ はあぁっ♡ ああ、気持ち良い♡ 気持ち良過ぎて本当に駄目になる♡」
「良いよ♡ ……っていうか、もう手遅れだろ」
不意に放たれた、暦の高圧的で冷たい声音に背筋がブルルッと震える。
「妹相手にこんなに盛って、襲い掛かるならまだしも、おむつ穿いて馬鹿みてーに腰ヘコヘコしながらアヘアへしてる時点で終わってるって。何か反論あるなら言ってみ? クソ雑魚マゾ野郎の時治くん」
俺は暦に抱き付くというよりも、しがみ付いた状態で、全身を小刻みに震わせていた。情けない事に、俺は暦の態度に恐怖を感じていた。
ずっと暦も楽しんでいると思っていたのが、否定された気分だったのだ。
そんな心持でありながらも、暦から漂う匂いは堪らなく性的で心地良く、身体の柔らかさは放し難く、官能的に感じられる。動きを止めていたはずの腰が小さく前後し始める。
「だっさ……。ここまでコケにされてもまだ腰振るんだ? 本当、終わってるね。このまま射精までしたら、マジで二度と普通の恋愛なんて出来なくなると思うけど良いの? まあ良いよね。既に男として終わってるんだから。ほら、いつまでも悔しがってるふりしてないで、腰振ってマゾ汁出せば?」
「うっ……うう……。暦様……♡」
「てか、捨ててあげよっか? マゾだからそれさえ嬉しいでしょ? 射精した瞬間から口聞かないってのはどう? 最後に金玉ぐらい蹴り上げてあげよっか? ね? どう?」
「あ、う、う、嫌です。お願いします♡ 暦様♡ 暦様に捨てられたら生きていけません♡ これからも俺の事を虐めてください♡」
「……じゃあ何でも言いなりになるって誓え」
「はいっ♡♡ 誓います♡♡ 暦様の命令には何だって逆らいません♡」
「私が射精しろって言ったら、どんな時でも射精出来る?」
「出来ます♡ 絶対に射精します♡ 暦様の命令が無ければ、もう二度と射精しないって誓えます♡」
「もしも、私のおまんこに生でおちんちん入れてる最中に命令されても?」
「……はいっ♡♡ もちろんですっ♡♡ 誓います♡♡」
「……あーあ♡ 良いの? そんな事まで誓っちゃって」
「良いです♡ だから、捨てるなんて言わないでください♡」
「はいはい♡ 分かったよ♡ じゃあ、優しくしてあげるから、無様腰ヘコ紙おむつ射精の続き、しようね♡」
「はーい♡」
微かに残る冷静な部分が、俺の言動を咎め、蔑んでいるが、もはやどうにもならなかった。
俺には、暦から与えられる被虐的な快感を失う事など考えられなかった。
失わない為なら、どんな事でもやるつもりだ。
暦がどんな考えを持って、俺を脅かしたのかは分からないが、媚びへつらう事で許されるのなら、幾らでも媚びへつらう。
「今度はしゃがんで、脚に抱き付きながら腰振ってごらん♡」
「はいっ♡」
言われるがままにしゃがみ、太ももの間に顔を埋め、脛に押し付けた腰を上下に振り続ける。
「後ろに回って、お尻に顔を埋めて♡」
「はい♡」
スカートの中に頭を突っ込む。その小さな空間を満たしていた、豊潤な雌の芳香が鼻孔を蕩けさせる。俺は理性どころか知性すら失った様な声で妹の名を口にしながら、顔を尻の谷間に押し付けた。
身体全体を上下に動かし、ふくらはぎへ陰茎を擦り付ける。むにむにと柔らかな尻たぶの感触を顔面に受けながら、俺は多幸感に包み込まれていく。ヘコヘコ、むにむに。
頭上からは暦の声。「馬鹿♡」「雑魚♡」「変態♡」「マゾ♡」「きもっ♡」「だっさ♡」「ばーか♡」などと並べ立てられる罵詈雑言が、俺の脳を、精神を、ぐちゃぐちゃに犯していった。
「あっ♡ ああん♡ あん♡ 暦様♡ もうマゾちんぽが幸せになり過ぎて♡ 精液のおもらししちゃいそうですう♡」
「ふふ♡ ちゃんと報告出来て偉いね♡ ほら、立って♡ 立ちバックでエッチしてるみたいな格好で腰ヘコさせてあげる♡」
「はい♡ ありがとうございます♡ 暦様♡」
俺は立ち上がり、ぎゅっと強く暦の背を抱き締め、うなじに鼻を押し付けながら、腰を振る。紙おむつ越しの陰茎を尻たぶに擦り付ける。
「あ゛あ゛っ♡ ヘコヘコ♡ 気持ち良っ♡ すぐ♡ すぐ♡ 出ちゃいそうです♡」
「ちゃんと気持ち良くおもらし出来る様に、もっと頭の中トロトロにして♡ もう二度と私の命令無しでは射精出来なくて嬉しい♡ 命令されれば足でもおまんこでもペロペロしちゃう、変態マゾ奴隷にされて嬉しい♡ ちんちんが妹に虐められる専用になっちゃって幸せ♡ って♡ ちゃんと私に支配される悦びを噛み締めて♡ 自分の為じゃなくて、私の為に射精するって言いながら射精しろ♡ この馬鹿マゾッ♡」
「あ、あ、あ♡ し、します♡ 暦様の為に♡ あっ♡ ああん♡ 暦様、暦様の為に射精します♡ あああ゛あぁ♡ あっ♡ イッ……♡ 暦様の為にぃ♡ マゾイキします♡ ああぁ♡ 出るっ♡ 暦様の為のザーメン♡ あああぁぁあぁっ♡♡」
爆ぜる様な快感があり、俺は無意識に爪先立ちになっていた。会陰部が引き攣るように収縮し、睾丸は跳ねているかの様にひくひく痙攣し、尿道内を熱い物が駆け上り、鈴口が押し広げられる気持ち良さがあった。
びゅるる、びゅる、びゅる、何度かに分かれて精液が放出される。その量が尋常でない事は、目で見ずとも分かった。
俺は一生このまま暦の背中にしがみ付いていたいとさえ思っていたが、足腰が立たず、よろよろとベンチに腰を下ろした。
すぐに暦が近付いて来て、おむつを外した。
精液の独特な香りがむわあ、と立ち昇った。
「やば……♡ 出し過ぎ♡ そんなに気持ち良かった?」
俺はハアハアと息をしながら頷いて答えた。
これから俺達はどうなっていくのだろうか。一抹の不安はあったが、心地良い疲労感の中で見る暦の顔は、いつにも増して魅力的に感じられ、俺は、二人でならどこまで堕ちても構いやしないと思うのだった。
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