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ぷるんぷるるん

女の子に気持ち良くいじめられるM男向け官能小説公開中。

恋人は巨根のふたなり#中編

 ようやく史織が満足した頃、真也はすっかり放心してしまっていた。巨大な肉棒がずるりと口腔から引き抜かれると、その場で崩れ落ちてしまう。
 床に溜まった白濁液に身を横たえる。目は虚ろになっていた。
 そんな真也を見下ろして、史織はハアハアと肩で息をしている。
 彼女の顔には、未だ満たされていない肉欲が滲んでいる。

「真也くん……」

 恋人の名を呼ぶ声音に、彼の身を気遣うようなところはない。
 真也を求めている、というよりも、更なる快感を求めているのだろう。

「もっと気持ち良いことしようよ……。ね……?」

 彼女は言葉を続けるが、真也からの返事はない。
 一人の人間が出したとは到底信じられないであろう量の精液が飛び散ったフローリングに転がったまま、荒い呼吸を繰り返すばかりだ。身に着けたままの上着が汚れるのも、気にする余裕がないらしい。彼が心身共に消耗していることは、疑う余地がないだろう。
 しかし、史織は目をスッと細め、酷く冷たい表情を浮かべた。
 
「……ねえ、そういうの良いから。早く起きてよ」

 真也は何の反応も示さない。

「こんなにおちんちん大きくさせてる癖に……辛そうなふりなんてしなくても良いよ」

 そう声を上げながら、史織は真也のペニスを軽く踏み付けた。
 史織が吐き出した精液は、彼の男根にもたっぷりと降り掛かっており、ぬるりと滑った。

「あうっ……!」

 呻き声を上げた真也の身体がピクリと跳ねた。
 こんな状態であっても、勃起した男根を刺激されるのは気持ち良かった。
 快感が意識を鮮明にさせる。真也は目をぱちくりさせて、史織の姿を見上げた。
 あれだけ大量に精液を吐き出したにも関わらず、全く萎える気配のないペニスがワンピースの裾を持ち上げていた。

「やっと起きてくれた。それじゃあ……もっと気持ち良いことしよう……?」

 そう言った後、史織はワンピースを脱ぎ捨て、ブラジャーを外した。
 零れ落ちるようにして露になった乳房は、目が眩むような白さだ。
 真也は、彼女のペニスを目にした時以上に、現実味を感じられなかった。
 史織のおっぱい、と胸の内で呟いた切り、何も考えられずに身動きを止めてしまう。
 呆然とする彼に向かって、全裸になった史織が身を屈める。

「ほら、真也くんも裸になろう?」

 上着に手を掛けられる。真也はただ、胸の膨らみが揺れる様を見つめるばかりだ。
 裸にされた後、史織に抱き付かれて「わっ」と声を上げるまでの間、彼はぼんやりとしていた。
 温かく柔らかい。それが初めて彼女と裸で触れ合った感想だった。
 もっとも、ペニスの存在感が強すぎる為に、女体の柔らかさに感動する間は殆どなかった。
 史織は抱き上げるようにして、真也を立たせて言った。

「ベッドに行こう」

 体格差を考えれば、あり得ないことであり、真也が自ら無意識にそう動いたに違いないが、彼にはどうも、史織に持ち上げられてベッドに押し倒されたようにしか感じられなかった。
 先の口淫や、ペニスの大きさで劣っていることのせいで、性別があべこべになってしまったような錯覚を抱いているのかも知れない。
 かよわい女子が、性欲滾る男子に押し倒される状景が脳裏に過ぎり、自らを犯される側に当てはめてしまったせいで、妙な気分になっていた。
 事実、覆い被さっているのは史織であり、真也は彼女がどう動くのかをドキドキとしながら待つしかなかった。
 そんな乙女めいた心持の自分に気が付くと、妙に恥ずかしくなった。
 赤らめた顔を背けて、真也は絞り出したような声を上げた。

「こ、これじゃあ、まるで俺が女の子みたいじゃないか……」

 史織が「ふふっ」と笑みを漏らした。
 嘲るような笑い声ではなかったが、それでも一層強く羞恥心を掻き立てられることに違いはなかった。
 真也がますます顔を赤らめる中で、史織が愉しげな声を上げた。

「今の話、凄く良いね……。真也くんが私のせいで女の子になっちゃう。……ふふっ、ドキドキする」

 酷く倒錯的な台詞を受けて真也はぎゅっと目を瞑った。
 史織の口から溢れた「ドキドキする」という言葉に対して、真也はそれが自分の心理状態でもあるとの錯覚を抱かされていた。
 如何なる変化をもって「女の子になった」とするのかは曖昧であったが、とにかく「女の子になってしまう」という半ば意味不明な状況に興奮してしまう。
 真也に追い討ちを掛けるように、史織は彼の頬に手を添えて、優しく正面を向かせた。

「恥ずかしがってる真也くんの顔、とっても可愛いね」

 好色漢めいた目付きで見つめられる。真也は「可愛い」といわれた自分の表情を少しでも早く史織の視界から外したいと願いつつも、普段の様子からは想像も出来ないほどに淫らな顔付きの史織から目を離せずいた。
 ぬるり。妖しさを帯びた美貌に見蕩れていた真也は、自分のペニスに触れたものの正体をすぐに察することが出来なかった。
 弾力のある熱く火照った何か、としか理解出来ぬ内に、ぬるり、と、再びペニスに先と同じものが擦り付けられた。
 見るまでもなく、少し考えればそれが何であるのかは分かった。
 本来なら少女にあるはずのない、そして自身のものより立派な、史織の男根だ。
 それを認識すると、途端に下腹部から脳へ目掛けて快感が突き抜けていった。
 堪らずに嬌声を漏らす。

「あっ……ああぁ……!」

「やだ……大きなおちんちんでお股すりすりされて気持ち良くなっちゃったの……?」

 真也の羞恥を煽り立てるような台詞を口にしている最中も、史織は腰を揺り動かし続けていた。
 亀頭のくびれが擦れ合い、粘着質な音を立てる。互いのペニスから溢れ出した先走り汁が、摩擦を程好く和らげていた。
 それが堪らなく気持ち良い。真也は身体を震わせ、喘ぎ声を上げる。
 ペニスでペニスを犯されていると言っても良い状況であり、それは一種の屈辱であったが、快感に翻弄されるばかりだった。
 そんな彼の様子を見下ろし、史織は一層淫らな笑みを浮かべて言った。

「喘ぐの我慢出来ない程、気持ち良いんだ……? 真也くんのエッチ」

「うっ、あ、ああぁ……!」

 史織の方がよっぽどエッチだ、と真也は思ったが、それもまた引け目であった。性器の大きさで劣り、性欲の強さでも負けている。その事実に、ますます己の男性性を否定されている気分になった。
 せめて喘ぎ声だけでも押し殺さなければ、と、真也は唇を噛んで強く口を閉ざした。それでもペニスに刺激を与えれれば、咳払いのようなくぐもった喘ぎを漏らしてしまう。
 真也は自分を情けなく感じるが、史織は違った。

「我慢しなくて良いよ? もっといっぱい真也くんの可愛い声を聴かせて……?」

 妖艶な囁き声に心が揺らぐも、羞恥心が勝った。真也は口を閉ざしたままで首を横に振った。
 史織はしばし黙ったままで腰を振っていたが、不意に左腕を支えに使って上体を浮かせた。

「もっと気持ち良くしてあげたら……我慢出来なくなっちゃうかな……?」

 そう言いながら、右手で真也の乳頭を軽く撫でた。
 途端に、ペニスに感じるのとはまた別種の快楽が湧きあがったのを真也は認めた。
 そして、史織の目論見どおり、彼は閉ざしていた口を開いてしまい、あられもない声を上げた。
 真也は、乳首を触られて喘いでしまったことが信じられなかった。

「おっぱいで感じちゃうなんて、本当に女の子みたいだね?」

 彼女の言葉が、思考を真っ白に染め上げてしまう程の倒錯的な興奮をもたらしていた。
 真也は混乱しつつも、史織があまりにも「女の子、女の子」と言うせいで、胸を触られて気持ち良くなってしまったと錯覚したのだと、自らに言い聞かせた。自分が男らしくない、それどころか、むしろ女のような心身をしているとは認めたくなかった。
 だが、乳首を撫で転がされるとどうしても気持ち良くなってしまい、喘ぎ声を押し殺すことが出来ない。

「うっ、あ、ああぁっ……やっ、やめて……!」

 自らの意思ではどうする事も出来ず、責めの手を緩めて欲しいと情けなく懇願する。
 普段の史織であれば即座に手を止めたに違いないが、今の彼女にとって真也が口にした言葉は、逆効果だった。

「やめて、だって……。真也くん、可愛すぎっ……! そんなことを言われたら、私……」

 腰の動きが限界まで早くなる。
 真也は、擦り付けられている彼女の男根が激しく脈打つのを認めた。
 股間に意識が集中したが、それは次の瞬間、胸に向かっていた。

「あぁっ……!」

 悲鳴に近い喘ぎ声を上げた真也の乳首は、史織の細い指で引き千切られそうな勢いで、抓られていた。
 乳首を抓り上げられ、喘いでしまった彼の反応が、ますます史織の嗜虐的な興奮を煽り立てた。
 兜合わせの状態にある大きなペニスからとろとろと我慢汁を垂れ流しながら、彼女は快感に酔い痴れた、あるいは色に狂った様な表情を浮かべている。
 真也は史織の変貌振りに恐怖さえ覚えたが、それさえすぐに快楽へと変わっていった。
 ペニスと乳首はもちろんだが、精神までもなぶられていると言えた。
 史織は細切れに息をし、甲高い嬌声を上げている。汗や唾液がポタポタと真也の身に垂れ落ちていた。
 そんな状態にあっても真也はただとろんとした目をして、されるがままだ。
 このまま自分が男であることを忘れてしまいたいとさえ思えた。
 しかし、彼の願望が満たされるより先に、行為は終わった。
 不意に史織が真也の乳首に爪を立てて引っ掻いた。それによって生じた鋭い快感に、彼の腰は跳ね上がった。
 その際に強くペニスが擦れ合い、その刺激で史織が達してしまったのだ。
 ぶびゅるっ、びゅる! びゅる!
 先の射精から然して経たずして果てたとは思えない量の精液が、彼女のペニスから迸った。勢いも強く、それは真也の胸にまで飛んだ。
 白濁液の青臭さは、くらりと脳が揺れるような興奮を彼にもたらしていた。
 自然と言葉が口をついて出た。

「もっと……して欲しい……」

 史織がはあはあと息を切らしつつも言う。

「お尻に入れて欲しいの?」

 男根で肛門を犯されるのが、如何なる感覚なのかは想像出来なかったが、今の真也にとって、それはとても甘美な行為に思えてならなかった。
 少しの不安はあったが、それ以上の魅力を彼は認めており、史織の問いに頷いて答えた。
「ふふ」と笑った後、彼女は大儀そうに身体を起こした。
 多少は萎えたようだが、ペニスはまだ勃起を維持していた。
 白く巨大な、真也のそれと同じものとは思えぬ男根の先からは、未だにとろりとろりと精液が溢れ出し続けていた。
 史織の体液は真也の下腹部を汚しており、それは睾丸どころか肛門にまで達していた。

「お尻の気持ち良さを覚えたら、真也くん、男の子に戻れなくなっちゃうかもよ?」

 そう言いつつも、彼女は真也の肛門へと手を伸ばした。
 指先がそこをぬるりと撫でる。
 真也はぴくりと震えた。確かに快感が認められた。

「そ、それでも良いから……」

 もはや彼に後先を考える余裕はなかった。
 史織は真也の反応に対して嬉しそうな顔をしたが、すぐに首を横に振った。

「今日は駄目だよ。私の大きいから、すぐには無理だよ。……でも、気持ち良いってことは教えてあげる。だから、まずはうつ伏せになって?」

 彼女が何を思ってそう口にしたのかは分からなかったが、従うほかなかった。
 真也が命じられた通りに身体の向きを変えると、今度は尻を上げるように言われた。
 異性に肛門を見せる経験などそうあるはずもない。それどころか、自分で見ることすら殆どない部位だ。
 そう考えると、真也は急に恥ずかしくなり、動けなくなった。
 なかなか尻を上げない彼に痺れを切らした史織が、手を振り上げる。尻たぶ目掛けて平手打ちを放った。
 パチン、と乾いた音が響く。
「ううっ」と呻いた真也の身体が跳ね上がった。

「もっとして欲しい、っていやらしいことを言い出したのは真也くんでしょう? どうして言うことを聞かないの?」

 叱り付けるような声音と共に、尻たぶが二度続けて打たれた。
 肛門を見られることを恥じる心理は極めて普通であり、叱られるほどのこととは思えなかった。
 それでも痛みと共に荒い語気をぶつけられると、真也は悲しいような申し訳ないような気持ちになっていった。
「早くして!」と、史織が声を上げて、更に尻を打った。
 真也は泣き出しそうな声で言った。

「ごめんなさい」

 そして、腰を浮かせて尻を彼女へと突き出した。
 背後から聞こえる史織の声は、嬉しげにこう言った。

「最初からそうしていれば、痛い思いをしないで済んだのに」

 平手打ちを喰らっていた尻たぶを優しく撫でられる。
 真也は背筋にゾクゾクとしたものが走るのを認めた。寒気の正体は悦びだ。傍若無人な振る舞いに翻弄されるのは、酷く気持ち良かった。自我が薄れていくことにはえもいわれぬ快感があった。
 亀頭の先から肛門の奥にある前立腺までがキュンと疼いた。

「……それじゃあ、お尻が気持ち良いってこと、教えてあげる」

 史織がそう告げると同時に、真也の尻の割れ目を両手で押し広げた。
 しっかりとそこが露になっている感覚は真也に羞恥を覚えさせたが、彼はそれに耐えるようにぎゅっと目を閉じた。

「ふふっ……。真也くんのお尻の穴、可愛いね」

 史織の声音が肛門のすぐ近くから聞こえたかと思うと、次の瞬間には吐息を当てられた。

「ひゃっ……」

 妙な声を上げた真也をくすくすと笑う史織。

「うっ、うう……史織……やっぱり恥ずかしい……」

「……ふふ。こう言うのはどうかな?」

 そう言って、史織は肛門にキスをするように唇を押し当てた。


恋人は巨根のふたなり#後編1

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33.珍妙なやりとり

 樫田の唐突な行動に、知奈は呆気に取られたような顔付きをした。
 そんな反応に構わず、樫田は言葉を続けた。
 忘れていた記憶を取り戻したことに酷く興奮している為に支離滅裂な部分も多々あったが、昨夜の出来事から今しがた起こった変化までを告げた。
 単なる夢だったのではないとの確信を持って、樫田は声を上げた。

「俺達はやっぱり過去に会ったことがあるんだ! それに、知奈ちゃんが忘れている知奈ちゃん自身のことも、思い出したよ!」

 知奈はぽかんとしたままで、樫田の話を聞いていたが、彼の声が途絶えて教室に静寂が戻るとキッと眉をひそめた。
 そんな知奈の反応を受けて、樫田は血の気が引いていくのを認めた。興奮が醒めると、自身の言動を悔いずにはいられなかった。
 酷く怒られるであろうことを予期して身を強張らせる。罵声に留まらず、平手の一つや二つも食らうのを覚悟するが、どちらも一向に飛んでくる気配はなかった。
 黙ったままで樫田を睨み付けていた知奈の瞼が、突然ストンと落ちた。短くも、単なるまばたきにしては長い間があった。
 目を見開いた知奈が、今度は驚いたような表情を浮かべる。そうかと思えばすぐに破顔一笑し、樫田がそうしたのと同じように勢い良く立ち上がった。
 満面の笑顔を浮かべる眼前の美少女が、いつもの知奈でないことは明らかだ。
 すっかり冷静になり、教室中の視線と注目を集めている今の状況に羞恥心を抱くばかりの樫田は冷や汗を流しながら訊ねた。

「知奈ちゃん、だよね?」

「うん!」という元気な返事をした後、知奈は樫田に抱き付いた。
 その際にふんわりと舞った香りは、天真爛漫といっ表情や声音とは裏腹のやけに色っぽいものだった。
 それにドキリとすると同時に、ますます奇異な状況へと陥ってしまったことに焦った。
 そんな樫田に構わず、知奈は嬉しそうに頬擦りをしながら声を上げた。

「思い出してくれてありがとう! ……私も全部、思い出したよ」

 震える彼女の声音が、樫田に再会を果たしたことを強く実感させた。 
 先ほどまで彼を支配していた焦燥感や羞恥心は吹き飛んでしまった。
 知奈の身を強く抱き締めて、彼女の名を呼んだ。

「知奈ちゃん!」

 先から変わらず頬擦りを繰り返している知奈もまた「渉!」と名を呼んだ。
 二人のやりとりは周囲から見れば全くもって意味不明だったが、苦難の末に大団円を迎えた恋愛劇めいており、みんな黙って見守るほかなかった。中には拍手を打とうと構えている者すらいた。
 そうした空気をぶち壊したのは、第三者ではなく、知奈自身だった。人格の入れ替わりが起こったのだ、と、後になれば理解出来ただろうが、樫田はその瞬間、何が起こったのか分からなかった。
 抱擁を解いた彼女から、頬への平手打ちを食らわせられた衝撃で頭が真っ白になっていた。
 追い打ちを掛けるように、知奈がヒステリックな声を上げた。

「一体これは何なの!?」

「あ、え、ああ、えっと……」

 相変わらず級友は黙ったままだが、沈黙の意味合いが先とは違っていた。張り詰めた空気が教室を支配している。
 言葉を詰まらせる樫田もまた、別種の焦燥感に苛まれていた。

「また……アレなの?」

 別人格が現れたのか、とはっきり問わない辺り、樫田に比べればずっと冷静なのだろう。
 知奈への返事として、樫田は何度か首を縦に振った。それが精一杯だった。
 二人も沈黙してしまう。
 原因が分かったところで、好奇の視線を集めるばかりの、この状況を抜け出す妙案が浮かぶ訳ではなかった。
 さすがの知奈も焦りを隠しきれないようだ。
 彼女の困惑した表情が、周囲にも動揺を走らせた。
 ひそひそとした話し声があちこちで上がり、次第に教室が騒がしくなっていく。
 こうなっては、この場を収めることが出来る人間は一人しかいない。
 貝塚が大きく手を打ち、注目を集めた後、授業の再開を告げた。
 知奈は事態が収拾したことに安堵しつつも、果たして貝塚の授業中に別人格が現れたことは偶然なのだろうかと訝しんだ。
 事の発端となった樫田は、まだ凄まじい早さで脈を打っている胸に手を当て、呆然とするばかりだった。


つづく

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恋人は巨根のふたなり#前編

 ある学園の開校記念日。
 世に出回るカレンダーには存在しない休日。
 逢瀬に相応しい、晴れているとも曇っているとも言い難い曖昧な空模様だ。
 もっとも、色恋沙汰には似付かわしくない澄み渡る晴天であったとしても、折笠史織(おりがさ しおり)が家人不在の自宅に、恋人を招いていたことに変わりはない。
 ワンピース姿の彼女の隣では、明らかに着慣れていない洋服に身を包んだ恋人――川上真也(かわかみ しんや)――が、緊張した面持ちをしている。
 二人はベッドに並んで腰掛けていた。
 彼らが顔を向けている先に設置されたテレビには、二人が揃って好んでいるバンドのライブ映像が流れている。
 もっとも、今の彼らにそれを楽しむ余裕などはない。
 互いの存在ばかりが気になって仕方ないのだ。映像が一秒でも早く終わることを望んでいる節さえあったかも知れない。
 この後のことを想像して、身体を火照らせたり、もじもじと身を揺すったりしている内に、彼らが待ち望んだ時が訪れた。
 テレビ画面が暗転する中で、真也が全く心のこもっていない声で「やっぱり最高だな」と呟いた。
「そうだね」と、応じる史織は、彼よりも深刻で、心ここにあらずといった風だ。

「……史織?」

 真也は呼び掛けながら、彼女の横顔を見やった。
 大人しく控え目な性格に反して、非常にはっきりとした目鼻立ちをしている。可愛いというよりも、綺麗といったほうが彼女の魅力を的確に表現することが出来るだろう。
 その綺麗な横顔は、赤く染まっていた。ライブ映像に興奮した訳でないことは真也にも分かった。
 思わず史織の胸元を見てしまい、慌てて目を逸らした。目を逸らした先で、枕元に置かれたティッシュ箱を見つけてしまう。これも良からぬ想像を掻き立てる。今度は俯いた。そして己の股間にテントが張られていることを認めて、まぶたを閉じた。
 しばし沈黙の後、史織が口を開いた。

「真也くん、この後……どうするの?」

「え?」

 思わぬ問い掛けに史織の顔を見やる。そこに浮かんでいる表情は、期待しているようにしか思えなかった。
 真也が動揺し、言葉を詰まらせているところへ、史織がとどめを刺す。

「するの?」

「えあっ!?」

 直球過ぎる問い掛けに、真也は素っ頓狂な声を上げるしかなかった。
 真っ白になって停止した思考が再び動き出すまで、数秒を要した。
 何とか我に返った真也は、自身の抱く『男らしさ』を全うするには、どうすべきかを考えた。
 男は堂々として、女を先導せねばならない。それが彼の考える男らしさの一端だ。
 史織の瞳をじっと見つめる。不安げでありながら、その時を待ち侘びているようにも思えた。
 ならば、すべきことは一つだ、と真也は彼女の肩を抱いた。
 それから短いキスをして、「する」とだけ告げた。
 真也は上手くやったつもりだったが、史織の表情が曇っていくにつれて、自信がなくなっていった。
 しまいには不安で仕方なくなり、声を上げた。

「あ、いや……史織が嫌なら……その限りでは……」

「違うの。私だって、したいの。でも……」

「……怖い?」

 真也からの問いに、史織は首を横に振って答えた。
 他に考えられる躊躇う理由は……と真也が思案を始める。
 黙りこくった彼を横目で見やり、史織は悲痛な面持ちで口を開いた。

「もっと早く言うべきだったのは分かってるの。ごめんなさい……」

「し、史織?」

「私は……!」と、意気込んで彼女が立ち上がった。
 真也の正面に立つと、一気に早口で告げた。
 
「私、ふたなりなの! それだけじゃなくて、めちゃくちゃ絶倫だし、性欲もとんでもないの!」

 真也が「は……?」と、声を上げてポカンとしていると、史織は彼の手を取って自身の股間に触れさせた。
 彼女の股間には、真也のよりも立派なテントが張っていた。
 それを強引に握らせて、やけくそ気味に声を上げる。

「ほら、本物でしょう!?」

 真也は手に伝う感触が作り物のそれだとは思えなかった。熱を帯びている。脈も打っている。そして、ワンピースの柄で目立たないが、肉棒の先端には染みが広がっている。
 確かに本物のペニスが、史織の股間に生えているのだろう。
 それは理解出来たが、だからといって何と声を掛ければ良いのかは分からなかった。
 真也はペニスを握ったまま、「ほ、本物だな。うん、これは本物だ。立派だ」と、訳もなく褒めた。
 当然ながら、史織が喜ぶことはなかった。むしろ悲しそうに言う。

「こんな身体の女の子……嫌だよね……?」

 真也は反射的に首を横に振った。
 行動を起こしてから自問する。本当に嫌じゃないのか。分からないというのが答えだった。
 余りにも突然の告白で、好きだとも嫌いだとも感じる暇がなかった。
 そんな曖昧な本音を口にすることは出来そうになかった。真也の目に映った史織の顔には酷く不安げな表情が浮かんでいた。
 真也が慌てて口を開く。

「史織……。あー……たとえ、そこがどうなっていようとも、史織は史織だ。俺の自慢の彼女だ。俺が君を好きでいることに変わりはないよ」

「……気を遣ってない?」

「まさか。いや、もちろん驚きはしたけど……ほ、ほら、さすがに実は男でした、っていうなら考えるが、ふたなりってことは……それ以外は女の子なんだろう?」

「うん……。あの、女の子のもちゃんとあるよ」

「そうか。じゃあ……それに関しては、ク……クリトリス……大きいクリトリスだと思えば、問題ないさ」

 少し大きすぎるが、と真也は心の中で付け足したが、大筋に嘘はなかった。
 ペニスが生えていると告げられ、更には強引に触らせられもしたが、同性に同じことをされれば湧くであろう嫌悪感はなかった。
 受け入れることは不可能なことではないと真也には思えた。
「でも」と、史織が声を上げる。

「私、凄いの……」

「何が?」

「性欲。昨日だって真也くんのことを考えて、七回もしちゃった……」

「七、七回……」

 真也はその性豪ぶりに圧倒され、生唾を飲んだ。
 過去に自分が一日に何度出来るかを試した際には、三回がやっとだった。それも三回目には殆ど何も出なかった。
 その倍以上なのだから、彼女の言葉にもあるとおり、凄いという他になかった。

「引くよね……?」

 悲しそうにそう言った史織に対して、真也は慌てて声を上げた。

「い、いや、元気なのは良いことだぞ!」

 無理に取り繕った明るい声音だった。
 史織の雰囲気に飲み込まれてはいけない気がしていた。
 飲み込まれてしまえば、彼女との別れが訪れるか、さもなければ、別の恐ろしい目に遭ってしまうような予感があったのだ。

「本当に? 本当にそう思う?」

「ああ。もちろんだ」

 そんなやりとりの後、史織はワンピースの裾をたくし上げた。
 均等の取れた下半身が露わになる。白い肌を隠すものは何もない。彼女は下着を穿いていなかった。
 美しい少女の顔には不釣り合いな男根が禍々しいまでにいきり立っている。真也が悲鳴を上げなかったのは、陰毛だけはこじんまりとしていた為だ。一本一本が細く、量も少なく、手入れもしっかりされているようだった。これが生やしっぱなしの剛毛であった日には、泣き出していただろう。そう思わせるだけの迫力があった。
 これだけ立派な一物の持ち主は、男の中にもそうそういないだろう。竿だけでなく、睾丸も重量級であり、たぬきを想像させる。
 握った際に大きいことは分かっていたが、改めて目にすると、圧倒されるばかりだ。真也は、しばし言葉を失っていた。
 史織が泣き出しそうな声で「やっぱり嫌だよね」と呟いた。
 
「そっ、そんなことはない!」

「……可愛いと思う?」

 ふたなりという特殊な形状でなくとも、生殖器を可愛らしいと感じられるようになるにはそれなりの経験が必要だ。素直に答えるのなら、可愛くはない、となるが、彼女が傷つくのは目に見えている。
 真也は、史織を悲しませない為に嘘を吐こうかとも考えたが、それを良しとせず、もう一度、彼女のペニスを見やった。
 自身のペニスはやや黒ずんでいるが、彼女のそれは他の肌と同じく白く透き通っていた。亀頭も鮮やかなピンク色だ。
 肉棒のみを見せられれば、そう感じないが、史織の一部だと思えばギリギリ可愛いと思えるかも知れない。真也はそう判断し、慎重に言葉を選びつつ彼女に伝えた。
 返事は、予想外のものだった。

「じゃあ……舐められる?」

「え?」と声を上げて、史織の顔を見上げる。そこにあるのは、紛れも無い雌の表情だった。
 赤く染まった頬に、物欲しげに潤んだ瞳。
 受け入れて貰えるか否かを試している風ではなく、単にその行為を望んでいるように見えた。
 ペニスの有無はともかく、美少女である史織が性欲を露わにする姿には、心が動かされるものがあった。
 真也はベッドを下りて、史織の足元で膝立ちになった。
 剛直を優しく握って言う。

「史織のなら……な、舐められる……」

 彼を見下ろす史織の瞳は「それじゃあ早く」と急かすように、淫靡な輝きを放っていた。
 真也は恐る恐る顔を近付けた。少し蒸れたような臭いがするものの、自身の恥部に比べればずっとマシだった。むしろ、良い匂いがするとさえ思えた。
 薄いピンク色の亀頭の先では透明な雫がぷくりと膨らんでいる。その様相は、たとえ匂いや皮膚の色が違っていても、紛れもない男根が眼前にそそり立っているのだと再認識させた。
 真也はごくりと生唾を呑んだ。一瞬の間があった後、彼は覚悟を決めたように舌を伸ばした。
 裏筋に舌を這わせる。

「あっ……」

 史織の口から艶やかな声が上がった。
 真也はドキリとしつつも嬉しくなって、今度は我慢汁の滲む先端へ舌を伸ばした。

「んっ……んん……」

 悩ましげな声音。小刻みに震える下半身。
 史織が快感を得ている。その事実に、真也は身体を火照らせる。
 彼はしばらく夢中になって、舌を這わせ続けた。
 ペニスはビクビクと痙攣し、大量の我慢汁を滴らせた。
 史織の口からは、明確な嬌声が響き始めていた。普段の大人しい彼女から想像のつかない、淫らな鳴き声だった。
 それに当てられ、すっかり興奮してしまった真也は、殆ど無意識に下半身を露出していた。史織のよりも小さな彼の男根は、ビンッといきり立っていた。
 ジンジンと疼くそれを握り締めると、快感が全身にワッと広がっていった。真也は大きく身震いし、喘ぎ声を上げた。
 彼の痴態を目にした史織が、ハアハアと息を切らしながら言う。

「待って。真也くんのことも気持ち良くしてあげるから……まずは、最後までして……?」

 もはや不安を感じている様子はない。いつになく積極的な態度だ。
 彼女が自ら真也に何かを求めることは今までに一度もなかった。
 真也は恋しい少女に求められていることにのぼせ上がり、何も考えずに大きく口を開き、ペニスを咥え込んだ。
 
「んぐっ、んんん……」

 くぐもった呻き声を上げる。口に含んで見ると、思った以上に大きかったのだ。
 それでも、歯を立ててはいけないと、限界まで顎を酷使する。
 苦しげな真也の姿に、史織が興奮したらしい。舌の上に、我慢汁がたらりと流れ落ちてきた。
 劣情に支配された彼女に恋人を気遣う余裕はない。彼の頭に手を添えて、うっとりとした声で言った。

「ん、あ、あっ……。もっと深くまで飲み込んで……」

「んん、んぐう……んんん……」

「あっ、あ、ああっ。気持ち良いっ……!」

 史織がそう声を上げると、ペニスがビクビクと脈を打った。
 口腔に強い異物感を覚えて、いっそう辛そうに真也が呻くが、史織は口淫を中断しようとはしなかった。
 ペニスの味や匂いが口一杯に広がり、鼻腔へも突き抜けていく。顎に掛かる負担にもいつまでも耐えられる訳ではない。次第に大きくなっていく苦しさや惨めさが、じわじわと真也を追い詰めていく。
 しかし、完全に発情してしまっている史織は、ひたすら肉欲に忠実だった。

「はあっ、はあ。ああぁ……。ねえ、しゃぶって……? 真也くんのお口で、私のおちんちん扱いて……」

 咥えているだけで精一杯だったが、それでも彼女の要求に応じよう、と、真也は顔を動かし始めた。
 すぐに嘔吐いてしまうが、必死にペニスにしゃぶり付く。
 彼はこの状況に飲み込まれてしまっていた。巨大な肉棒への口淫はあまりに苦しく、思考は鈍くなっていくばかりだった。
 もはや何のために苦しさに耐えて、男根に奉仕をしているのかも分からなくなってしまう。それでも後戻りは出来ないのだ。
 史織を恋しいと思うがゆえであったとはいえ、少しでもふたなりペニスを受け入れてしまった時点で、退路を自ら断ったとも言えた。
 顎に走る痛みと込み上げる嗚咽に苦しめられ、真也は、だらしなく唾液を垂れ流し、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死でフェラチオを続けた。
 甲高い喘ぎ声を上げるばかりだった史織が、不意に叫んだ。

「あっ、あんっ、ああぁ、し、真也くん、か、顔っ、顔を見せてっ!!」

 真也は既に殆どなにも考えられなくなっている。ペニスを咥えたままで、顎を上げた。
 悲惨な状態にある彼の顔を見て、史織は歓喜の声を上げた。

「あっ、ああ、か、可哀想なのに……、すごく……はっ、はあ、可愛い……それにエッチ……! あ、ああっ、駄目イキそう……!」

 今でさえやっとのことで口腔に収まっているペニスが更に大きく膨らむ。
 それを射精の予兆と捉えた真也は、目で訴える。出さないでくれ。
 視界からは外れているが、巨大な睾丸がブラブラと揺れている気配を感じ取ることが出来る。その大きさから、精液の量も凄まじいであろうことを真也は想像していた。
 殆ど呂律が回っていないが、史織はこんなことを口走りながら絶頂へ至った。

「んっ、いやっ、無理……! 出ちゃうっ、出ちゃう! 大好きな彼氏のお口にザーメンいっぱい出しちゃうっ、止められない……!」

 ぶびゅっ! 大きく脈を打ったペニスから熱く滾った白濁液が放たれ、真也はそれを喉で受け止めた。当然ながら彼は咽た。
 慌ててペニスを口から引き抜こうとしたが、史織が彼の頭を押さえ付け、それを許さなかった。
 ぶびゅるるっ!
 再び精液が吐き出される。先よりもずっと大量だ。
 真也が大きくむせ返り、白濁液を吐き出した。鼻腔にも流れ込んでいたらしく、鼻からも白くねっとりとしたものが滴った。
 彼がそんな状態であるにも関わらず、史織は頭を掴んで離そうとしなかった。
 ペニスの大きさに相応しいともいえる、長い射精が続く。
 史織は断続的に精を吐き出し、その度に歓喜の嬌声を上げ、全身を大きく震わせながら背を弓なりに反らした。


中編へつづく

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32.彼らの記憶

 絶頂の余韻でビクビクと震え続ける樫田の下半身に、下着とズボンを履かせ直して、知奈が布団から出ようとモゾモゾ動き出す。
 ややして頭の先が見えると、樫田は身構えた。
 あの長い舌や、無数の舌を有する口の持ち主が、人間であるはずがない。
 布団の中に潜り込んでいった時とは全く違う化け物めいた姿が現れるのではないかと恐怖し、身動き出来ずにいた。

「ぷはっ……。熱い」

 そう言いながら、少し汗ばんでいる以外に変化のない知奈が顔を見せる。身体にもおかしなところはない。
 そうなると、ますます先の出来事が現実だとは信じられないが、樫田はひとまず安堵した。
 彼が脱力していると、知奈が布団に跨がった。
 腹に乗られたことで「うぐ」と呻いた樫田の顔を見下ろして、にこにことしながら知奈は言う。

「ごちそうさまでしたっ。渉の精液、美味しかったよ」

 言葉の内容に全くそぐわない、屈託のない笑みと声音だった。
 樫田はぽかんと呆けた顔をして、思考を失った。
 まさか「おそまつさまでした」などと返事をする訳にもいかない。
 彼が黙っていると、知奈が「あっ」と声を上げた。

「聞きたいことがあるんだよね?」

「あ、ああ……」

「何でも聞いて、私に答えられることなら、頑張って答えるから!」

 知奈はそう言って、相変わらずのにこにこ顔を浮かべている。

「じゃ、じゃあ、あの知奈ちゃん……さっきのは一体……?」

 聞くべきことはいくつもあったが、どうしても先の出来事への関心が先に立ってしまった。
 知奈は少し考えたあと、こう言った。

「ご、ごめんね、実は私にも良く分からないの……。渉のことを気持ち良くしようと思ったら出来たの。あっ、ほら、口は普通の口だよ?」

 口を大きく開く。その端に両手の人差し指を引っ掛けて、無理矢理広げて見せる。
 樫田の目には確かに何の変哲もない口腔に見えた。
 では、先の出来事は単なる錯覚なのか。そうではないのだろう。知奈は「出来た」と言った。
 人間離れした口淫は現実の出来事なのだろう。どうしてそれが可能なのかは、知奈にも分からないらしい。
 彼女に分からないのなら、これ以上は考えても無駄だ、という結論に達するまで、樫田は十数分黙って思案していた。
 次の質問に移ろうと視線を上げると、知奈は目を瞑って前後に小さく揺れていた。

「ち、知奈ちゃん?」

「ん……。ご、ごめん、なんだか眠くて……。質問は、また今度……」

「ま、待って! 最後に……あっ! お、俺達は会ったことがあるのか!?」

「……あるよ。だって私はずっと前から……知奈の中に……いた……」

 徐々に小さくなっていく声が完全に消え入ると同時に、知奈の身体は前へぐらりと倒れた。
 樫田が慌てて手を伸ばすが、空を切るのみだった。
 消えた。彼がそう認識したのと、ベッドで眠る知奈が小さく呻いて寝返りを打ったのは、ほとんど同時だった。
 最後に彼女が告げた言葉を信じるならば、消えたのではなく、戻った、が正しいのだろう。

「うーん……」

 全ては夢だったのかも知れない。
 それが最も妥当な考え方であるとしつつも、樫田は納得出来なかった。異常な口淫の感触が、まだペニスに残っているような気がしてならなかった。

 なんにせよ、一度眠って冷静になろう。
 樫田は、そう決めて目を閉じたが、睡魔はなかなか訪れなかった。
 一連の出来事が自然に脳裏に浮かぶ。それらに対する「ああでもない、こうでもない」といった取り留めのない考えも湧いてくる。
 考え込まないように努めている内に、薄らと眠気がやってくる。
 波間を漂う藻屑のような曖昧な思考は、弱い眠気を受けて、形を変える。それは明晰夢にも似た、思考と地続きになっているような夢だ。

 そんな夢だった為に、目を覚ました樫田は判断に迷った。
 知奈やその別人格の言葉を受けて生まれた単なる空想だったのか、あるいは過去の記憶が夢の形を成して蘇ってきたのか。
 樫田は夢の中で、幼い頃の知奈と出会ったのだ。
 今の彼女からは想像も付かないぐらいに喜怒哀楽が激しく、泣いたり笑ったりを忙しく繰り返しながら、後を追ってくるような子だった。
 
 夢の根幹が、単なる空想なのか、忘れていた記憶なのか。
 その判断を付けられないのは、知奈に纏わること以外に関しても、過去を曖昧にしか思い出せない為でもあった。
 そこがはっきりとすれば、知奈に関することも分かるはずだと樫田は己の記憶を遡り始めた。
 その密かな作業は、結果が出ないまま朝から昼まで続けられた。
 一向に蘇る兆しの見えない記憶に挑み続けることに疲れ果て、ぼんやりと知奈の横顔を見つめている中で、不意にそれは訪れた。
 現在の自分に対する落胆。自分はこんな人間ではないはずだという思い。
 幼いがゆえの万能感に満ちた状態で知奈と接していた時の精神状態へと一気に引き戻される。身体がカッと熱くなり、樫田は訳もなく立ち上がった。
 授業中だ。視線を集めていることにも構わずに、彼は声を上げた。

「知奈ちゃん! 思い出した、思い出したよ!」


33.珍妙なやりとり

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31.異質な口淫

 布団の中に潜った知奈は当然とばかりの手付きで、樫田のズボンと下着をまとめて脱がせた。
 皮を被った男根は、すっかり起ってしまっていた。
 知奈はペニスに顔を近付けて鼻を鳴らしてから、うっとりとして言った。

「渉のおちんちん……とっても美味しそうな匂い……」

「ち……知奈ちゃん……」

「ふふっ。いっぱい出してね」

 そんなことを言いながら、知奈は陰嚢に口を付けた。
 ちゅうっと吸って口腔に捕らえた睾丸に舌を絡ませる。
 柔らかな舌が敏感な部位を這う感覚に、樫田は堪らずに喘ぎ声を上げた。
 知奈の舌はいっそう激しく睾丸を責め立てる。縦横無礙(じゅうおうむげ)にあらゆる動きをして、無数の快楽を奏でた。
 全身を痙攣させて快楽に悶える樫田は、一瞬だけ何らかの違和感を覚えたが、その正体を探る余裕はなかった。
 舌は蠢き続け、樫田に快感をもたらし続ける。ペニスの先から我慢汁が滲み出し、睾丸は知奈の唾液でぐっしょりと濡れている。
 知奈が陰嚢から口を離して声を上げる。

「わあ……。おちんちん、さっきよりも大きくなったね」

 樫田ははあはあと息を切らすばかりだ。返事をする余裕はなかった。
 陰嚢には未だに舌が這い続けているかのような強い余韻が残っていた。
 知奈の言葉でいう『さっきよりも大きくなった』ペニスに、彼女が口を付ける。
 可憐な唇が男根に触れると、樫田はビクッと身を震わせた。
 舌が這わされる。
 ここで樫田は再び何かがおかしいと感じた。
 今度はさすがに原因に気付いた。舌が余りにも長すぎる。睾丸を責められている時には何となくとしか感じなかったが、今は違う。
 ペニスの真ん中辺りに唇が触れているのに、そこから伸びる舌先は亀頭の更に向こう、余った包皮の入り口に触れているのだ。

「ちっ、知奈ちゃん……!?」

 驚愕の声を上げた樫田だったが、知奈から返ってきたのは言葉ではなく快感だった。
 人ならざる長さの舌が、包皮をぬるっと剥き、そのまま亀頭にぐるりと巻き付いてゆっくりと扱いたのだ。

「あっ、あああぁっ!」

 布団の中であり得ないことが起こっている。僅かに残る理性がそれを認めるものの、男根を扱かれてしまうと、どうでも良くなってしまう。
 気持ち良い。ただそれだけが樫田の思考を支配していた。
 舌はぬるぬると唾液を塗り広げながら、丹念に男根を扱いた。
 樫田の口からは喘ぎ声ばかりが上がり、腰は上下にガクガクと震えていた。
 ややして、鈴口から溢れ出した我慢汁を舐め取りながら、舌が引っ込んでいく。
 刺激が止んで快感が引いていくと、途端に樫田は恐怖した。

「い……一体なんなんだ! やっ、やめてくれ……!」

「ふふふっ。本当にやめて欲しいの? 渉のおちんちんはそんなこと思っていないみたいだけど?」

 くぐもった知奈の声。次いで、ペニスを根元からゆっくりと舐め上げる舌の感触。
 怯えているにも関わらず、男根はいつも以上に敏感になっていた。
 樫田が短く喘ぐと、知奈は「ほらね」と笑った。
 それから彼女は、ペニスを咥え込んだ。
 下腹部に走った甘い痺れに、樫田が声を上げる。

「うっ、ううう、こ、今度はなんだ!?」

 ペニスを包み込む感触は、口腔のそれとは思えなかった。
 柔らかな肉が隙間無くくっ付いてくる。今の彼女の口は、まるで陰茎を挿入する為だけに作られた器官であるとしか思えないほどだ。
 樫田はまだ味わったことのない女陰の感覚を想像した。
 もちろん、実際にそこにペニスが飲み込まれた訳でないことは、理解している。
 鼻が陰毛に触れていたり、髪の毛が太ももに垂れていたりするのだ。知奈の顔が股間に埋められていることに間違いはない。
 更なる異変が樫田を襲う。
 ペニスに生じる刺激の種類が変わった。今度は、四方八方から無数の舌で舐められている感覚があった。舌先がちろちろと小刻みに動かされている。
 樫田が悲鳴を上げる。彼が恐れたのは、人体の構造に反する刺激に対しても勿論だが、それ以上に気持ち良くなり過ぎてしまっていることに対してだった。
 彼は、これまで味わったどんな快感よりも強い快感に襲われていた。
 そんな中で、口腔が再び変異する。
 舌がそれぞれ長く伸び、ペニスに巻き付いた。一本の筒に似た形になっているのだろう。それが上下に揺り動かされる。

「あっ……あ、あ……」

 樫田は目を見開き、呼吸するのも忘れるほどの快感に襲われていた。
 無数の舌で作り出された長い穴でペニスを扱かれているのだから、無理もない。
 腰の奥から熱い物が昇ってくる。
 樫田の中にはもう恐怖が残っていなかった。
 異常な刺激を恐れる余裕もなくなるほどの快感が、耐えず込み上げてきている為だった。

「ああ……あああぁ……!」

 弱々しい、喘ぎよりも悲鳴に近い声を上げて、樫田が果てる。
 ぶびゅっ、びゅるる!
 腰をガクンガクンと大きく震わせながら、たっぷりと精を吐き出す。
 永遠に精液が止まらないのではないかと錯覚するぐらいに大量の精液が放たれた。
 舌は、乳搾りでもするかのように、根元から順にきつくペニスを締め上げた。
 そうして尿道に残っていた白濁液まで啜ってから、知奈はペニスを離した。


32.彼らの記憶

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